インド新興財閥アダニ・グループの創業者ゴータム・アダニ氏(62)は20日夜、経営するグリーンエネルギー企業の資金調達も順調に進み、上機嫌だった。就寝前にインド西部グジャラート州アーメダバード市内の自宅で妻とくつろいでいたと、同氏と親しい人物は語った。
だが、午前3時ごろ、状況が一変する。米検察がアダニ氏ら複数の幹部を詐欺罪などで起訴したとの衝撃的な知らせが飛び込んできた。
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数分後には、アダニ・グループの幹部らが電話会議を開催。21日朝の時点で、アダニ氏は声明を出すことが望ましいのか、まだ確信が持てないようだった。ムンバイの株式市場が開くと、アダニ・グループの株価は急落。予定されていた6億ドル(約930億円)の社債発行も中止した。正午までには、幹部による不正行為の疑惑を全面的に否定し、法的措置を取ることを示唆した。
アダニ氏起訴のニュースを伝えるボンベイ証券取引所前の電光掲示板
Photographer: Indranil Aditya/Bloomberg アダニ氏と同氏のビジネス帝国に今後何が起こるのかは不明だ。
インド証券取引委員会(SEBI)は、市場を動かし得る情報の開示を義務付ける規則にアダニ・グループが違反したかどうか事実関係の調査を行っている。ブルームバーグが22日、事情に詳しい関係者の話として報じた。このプロセスは2週間かかる見通しで、その後、SEBIは正式調査を開始するかどうか判断する。
向こう数カ月には身柄引き渡しを巡る対立など、政治的な問題に発展するかもしれない。トランプ次期米大統領が問題の解決を望めば、近くそのためにインドと取引を行う立場になる。トランプ氏の周辺関係者らはインドおよび、特にアダニ・グループを、中国の覇権に対抗する重要なパートナーとみている。
今回の起訴とは関係なく、トランプ一族のメンバーはこれまで、アーメダバードにあるアダニ氏の自宅を訪れたことがある。センシティブな情報だとして匿名を条件に関係者が明らかにした。
いずれにしても、今回の起訴では数カ月、あるいは数年の時間を要する可能性があり、今後どうするかは第2次トランプ政権下の司法省が決定することになる。
とはいえ、その影響はアダニ・グループとその創業者にとどまらず、融資元のグローバル銀行にも波及する可能性がある。
世界の投資家や銀行は長年にわたり、アダニ・グループに巨額を投じており、同社が港湾、武器、再生可能エネルギーに至るまで、多角的なコングロマリット企業へと急成長するのを後押ししてきた。海外事業はベトナムからイスラエルにまで及び、中国の広域経済圏構想「一帯一路」のインド版とも呼べるほどの規模に拡大した。
だが、海外展開の野望にも影響が及ぶ恐れがある。ケニアのルト大統領は21日、インフラ事業を巡るアダニ・グループとの契約2件、総額26億ドル相当を白紙撤回した。同社の不正疑惑が理由だという。
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ヒンデンブルグ・リサーチの報告書を受けて調査を求めて抗議する人々(2023年2月)
Photographer: Manish Swarup/AP Images 今回の起訴はアダニ・グループの事業存続を脅かすものではないが、新規資本の調達は難しくなる可能性がある。同社の銀行取引に詳しい関係者が部外秘の情報を理由に匿名を条件に語った。銀行側は起訴に関する明確な説明を同社に求めているが、既存融資の返済については心配していないという。
また、すでに微妙な米国とインドの関係にも影響を及ぼしそうだ。インドのモディ政権は身柄引き渡しの要請には抵抗するだろう。米国は近年、アジアの重要な同盟国としてインドを取り込もうと、モディ首相の下で高まる宗教的ナショナリズムに対しても批判も和らげてきた。カナダのトルドー首相は昨年、インドからの分離・独立を主張するシーク教指導者が殺害された事件で、インド政府が関与したとして強く非難。一方、米国内でも同じような暗殺未遂事件が起こったにもかかわらず、米国の対応は極めて慎重だった。
モディ氏と緊密な関係にあるとされるアダニ氏は米大統領選後、ソーシャルメディア、X(旧ツイッター)への投稿でトランプ氏に祝意を伝え、「不屈の精神の体現者」と持ち上げた。アジアで最も裕福なムケシュ・アンバニ氏を含め、他のインド財界のリーダーは何も言わなかった。
ヒューストンで開催されたイベントに参加するモディ氏(左)とトランプ氏(2019年9月)
Photographer: Saul Loeb/AFP/Getty Images 一方、インド国内では、野党がモディ首相とアダニ氏との関係を追及する構えを強めており、議会調査の実施を求める声が上がっている。
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首相自身を含め、モディ政権は今のところ、沈黙を守っている。モディ氏は2014年に政権を握って以降、国家の発展戦略としてアダニ氏ら一握りの大富豪を優遇することに重点を置いており、縁故資本主義との批判につながっている。2人はモディ氏がグジャラート州首相を務めていた時代から数十年にわたる交友関係にある。アダニ氏は1980年代に同州で事業を始めた。
米ワシントンのウィルソンセンター南アジア研究所のマイケル・クーゲルマン所長は、米空売り投資家ヒンデンブルグ・リサーチによりアダニ・グループの不正会計・株価操作疑惑が浮上した際と同じ対応を取る可能性が高いと指摘。「アダニ氏について公には沈黙を守り、同氏との関係に注目が集まるようなことは全力で避ける」と述べた。
記者会見を開く野党指導者のラフル・ガンジー氏
Photographer: Sajjad Hussain/AFP/Getty Images アダニ氏を巡るスキャンダルは、インドが投資家のマネーと信頼を獲得する上で助けにはならないだろう。インドをグローバル資本が集まる主要拠点に押し上げるとのモディ氏の構想にも影を落とす。それでも、アダニ氏の国内における絶大な影響力が衰えることはないだろう。多くの人々にとって、アダニ氏は「大きすぎてつぶせない」存在だ。
ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、21日の株価急落後も、アダニ氏の個人資産は720億ドルに上る。
原題:
US Bribery Charges Plunge Adani’s Empire Back Into Crisis (2)(抜粋)








