米政府の信用力に裏付けられた米国債と、マイクロソフトのクラウド・コンピューティング事業に支えられた同社社債――どちらを保有したいだろうか。ブルームバーグのポッドキャスト、オッド・ロッツで最近これが話題になった。
TDセキュリティーズのストラテジストが問いを投げかけたきっかけは、2027年1-3(第1四半期)に満期となるマイクロソフト債の利回りが同年限の米国債を下回ったことだ。
市場参加者によると、マイクロソフト債は米国債利回りを1.9ベーシスポイント(bp)下回った。少なくとも一部の投資家は、マイクロソフトと米政府のデフォルト(債務不履行)リスクをほぼ同等とみなし、むしろマイクロソフトを米国よりわずかながら安全と判断したことになる。
TDセキュリティーズのハンス・ミッケルセン氏は「つまり、投資した資金を回収できる確率は米国債とマイクロソフト債でほぼ同じだということだ」と解説する。
これは本来、起こるはずのない現象だ。米国債は他のあらゆる信用資産の基準となる「リスクフリー資産」だからだ。社債が米国債のデフォルトリスクが同等という異常な状況には、いくつかの説明が考えられる。
1つ目は単純に、市場がマイクロソフト債を誤って評価したという見方だ。理論的には企業は破綻し得るが、米政府は破綻しないため、マイクロソフト債の利回りが米国債を下回ることは本来あり得ない。
2つ目の説明は需給の問題だ。年金基金や保険会社のような大口投資家は、既に米国債の保有比率が高い場合などに社債の保有を増やす必要があり、多少高値でも買いに動くことがある。
また、信用力や将来のキャッシュフロー見通しの観点からの説明もある。マイクロソフトは現在、主要格付け会社で最上位のAAAクラスの格付けを維持しており、一部でAAクラスとされる米政府を上回る。
もし人工知能(AI)が将来の世界経済の基盤技術となり、GPU(画像処理半導体)が新たな石油となるなら、マイクロソフトは米政府が税収を得るのと同じように、顧客から持続的に収益を得られるかもしれない。
3つ目の説明は、米国の財政に焦点を当てたものだ。現在の米国は政府閉鎖のさなかにあり、累積債務の急増によって債務上限がほぼ恒常的に引き上げられている。
ミッケルセン氏は「米国は持続不可能な財政の軌道上にあり、わずかとはいえデフォルトリスクがある。一方、マイクロソフトは純粋な米企業ではなく、収益の49%は海外から得ており、その中にはドイツのようなAAA格付け国も含まれる」と説明した。
ソブリン・アメリカ(米政府)よりもコーポレート・アメリカ(米企業)の方がうまくやっている現状を、市場が反映している形だ。投資家は、過去最高値を更新する株式や、スプレッドがゼロに迫る社債など、民間部門への投資を好む一方で、米国債やドルといった政府系資産への熱意は明らかに薄れている。
Source: Bloomberg
この乖離(かいり)はあまりに鮮明で、JPモルガンのニコラオス・パニグリツグルー氏をはじめとする一部アナリストは、企業信用と米国債を比較する従来の手法がもはや成り立たない可能性を指摘している。
代替的なベンチマークとして、スワップスプレッドなどの指標を用いることで、「政治的あるいは政府固有の要因を排除し」、より純粋に信用価値を測定できるとの見方もある。
ブルームバーグの記者
ケイレブ・ムトゥア氏が先週指摘したように、この指標で見ると信用市場の状況はそれほど極端ではない。高格付け社債のスプレッドは約1.52ポイントと、ここ数年の水準とほぼ一致している。
結論として、米国債は理論上今でもリスクフリー資産であるものの、実際にはマイクロソフトの方がリスクフリーに見える状況だ。世界で最も信用できるのは、紙幣を刷る政府ではなく、AIを駆使するソフトウエア企業になりつつあるのかもしれない。
原題:
Odd Lots Newsletter: Saying Bye to the UST Bond Benchmark?(抜粋)







