衆院選は27日午後8時に投票が締め切られ、28日未明にかけ開票作業が行われた。自民・公明両党が目標とした過半数の233議席(定数465議席)を下回ったとNHKや共同通信が報じた。石破茂首相の責任論が浮上し、経済政策を含めた政権運営に混乱が生じかねない事態となりそうだ。
自民は非公認で立候補した前職を除くと選挙前の勢力は247、公明党は32だったが、自民党総裁の石破首相は「与党で過半数」を勝敗ラインに掲げていた。NHKによると、自民は191議席、公明は24議席で計215議席にとどまった。立憲民主党は選挙前の98議席から148議席に大幅増という。自公が過半数割れするのは政権を失った2009年の衆院選以来で、公明は石井啓一代表が落選した。
石破首相は27日夜、テレビ朝日の番組で職責を全うするのかと問われ、「そういうことだ」と政権維持への意欲を表明した。「これから先どうやって、われわれが掲げた政策を実現するか、そのことに向けて努力は最大限していかなければならない」とも強調した。
自公の過半数割れで石破首相は特別国会での首相指名選挙に向けて無所属や野党に協力を得る多数派工作を進める構えだ。ただ、首相の責任を問う声が上がる可能性もあり、選挙前に指示した経済対策や、年末の税制改正で決着させるとした防衛増税の開始時期を巡る議論への影響も避けられない。減税などを求める野党の主張を受け、財政拡大への圧力が強まりそうだ。
明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは自公が過半数を失えば政局の不透明性は高まり、市場は株安・円安で反応した後、乱高下が数日間続く可能性があるとの見通しを示した。財政拡張的な政策を求める野党に引っ張られる形で補正予算の規模は膨らむ可能性は高く、「財政規律といった中長期的な課題は先送りにされるだろう」と語った。
一時153円台まで下落
28日朝の外国為替市場では円相場が下落し、一時1ドル=153円27銭と7月31日以来の安値を更新した。衆院選での与党の過半数割れを受けて、政治的な不透明感が嫌気されている。
三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、円相場について「政治的な不透明性から先週売られた流れを引き継ぎ、下落圧力が続きやすい」とし、1ドル=155円が心理的に重要になると指摘。日本銀行の金融政策にも影響を及ぼし、「市場で12月の利上げ観測を強め得る」と語った。
今回の結果を受けて、日銀の金融政策の見通しが複雑になる可能性もある。日銀は追加利上げのタイミングを探っているが、30、31日に予定されている金融政策決定会合では、政策金利の据え置きが広く予想されている。
楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、日銀にとって最大のリスクは、衆院選の惨敗を受けて自民党内で石破総裁を降ろす勢力が勢いをつけて、財政拡張を好む高市早苗氏らが総裁になることだと指摘。その場合は、「利上げを続けて正常化を続けていくことは難しくなっていくだろう」との見方を示した。
多数派工作
各党幹部は27日夜から28日未明にかけ、記者会見やNHKや民放の番組への出演で、自公過半数割れを想定した首相指名選挙への対応について発言した。自民党と立憲民主党との間で日本維新の会、国民民主党や無所属当選者らの協力取り付けに向けたさや当てが早くも始まっている。
石破首相は、協力を求める勢力については「一緒に政策をやれるか」を優先して考える方針を示した。立民とも政策面で協調することはあり得るとした。自民党の小泉進次郎選対委員長は、自公で過半数割れとなれば「野党のご理解を得なければ多数を作れないという局面があると思う。他党との協力も含めて、虚心坦懐(たんかい)に向き合わなければいけない」と述べた。
一方、立憲民主党の野田佳彦代表は「戦うべき環境なら首班を取りに行くのが当然。政権交代こそ最大の政治改革と言った以上はそれを追求していきたい」と述べた。特に先の国会で石破内閣への不信任決議案を共同提出した維新、国民民主、共産党などを中心に協力を呼び掛ける方針を示した。同党は28日午前に執行役員会を開き、今後の対応を決めるという。
また、維新の馬場伸幸代表は「今の与党に協力する気は全くない」と自公連立政権入りを否定。立民への協力にも慎重な考えを示した。
国民の玉木雄一郎代表は自民から連立政権入りを呼び掛けられても交渉には応じないと述べた。ただ、玉木氏は「経済政策を実現するためには協力いただけるところとは協力していく」とも語った。
NHKによると、維新は38議席、国民は28議席を獲得した。無所属で当選が報じられた12人には萩生田光一氏ら自民党非公認で出馬した前職3人、裏金事件を受けた処分で離党した世耕弘成氏がいる。
立憲民主党の野田佳彦代表
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg 住友生命保険の武藤弘明エコノミストは、石破首相が引き続き政権を担う場合は、地方創生に重点を置いた「バラマキ色が出てくるだろう」と指摘。財政は「拡張方向で金利については上昇しやすくなる」との見通しも示した。立民が政権を奪取した場合は「金融財政政策に関して首尾一貫性があるようには見えておらず、結構マーケットは混乱すると思う」と語った。
石破首相は政権発足から戦後最短となる8日後に解散に踏み切った。派閥の裏金事件で政治不信が高まる中、自民党は政治資金収支報告書に不記載のあった旧安倍派や旧二階派の前職らの一部を非公認とした。立民の野田代表は「裏金隠し解散だ」と首相の対応を批判。物価高対策を巡っては、与野党は給付金や減税などの政策を訴えた。
総務省が発表した27日午後7時半現在の投票率は全国平均で31.52%と前回2021年の34.32%を下回った。一方、26日まで行われた期日前投票では有権者の約20%に当たる2095万人超が投票を済ませた。
前回の最終的な投票率は小選挙区で55.93%と4回連続で50%台にとどまった。旧民主党が政権を獲得した2009年は69.28%だった。
各党の獲得議席(選挙前勢力) 出所:NHK報道
自民党: 191(247)
立憲民主党: 148(98)
日本維新の会: 38(44)
公明党: 24(32)
共産党: 8(10)
国民民主党: 28(7)
れいわ新選組: 9(3)
社民党:1( 1)
参政党: 3(1)
日本保守党:3(0)
無所属他: 12:(22 、自民非公認の前職含む)
合計: 465 (過半数は 233)
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(情勢や為替市場の反応などを追加し、更新しました)
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