
昨日の米国経済ニュースから特に注目すべき5つをまとめてご紹介します。トランプ政権によるインフラ・税制政策の転換や、AI半導体の覇権競争、重要輸出規制の緩和、テスラと中国BYDによるEV対決、そして大規模予算案可決による各産業への影響など、いずれも政策設計や構造転換に高い関心を持つ方には見逃せない内容です。それぞれに政策・産業横断のダイナミクスが交差する最新状況を、数値データや制度変更をまじえて解説します。
Contents
インフラ・エネルギー転換と『一つの大きな美しい法案』成立の衝撃
トランプ大統領の“Big Beautiful Bill”が両院を通過し、2017年大型減税やメディケイド制限、再エネ税制優遇の縮小など、大規模な税制・支出変更が決まりました。2026年度には財政赤字が現行法想定比で4,430億ドル増加し、2030〜は2,560〜3,190億ドル増と中期的にも高止まりします。ポイントは社会保障減税や児童税額控除強化、所得税率の据え置き(2.2兆ドル規模)、一方でグリーンエネルギー関連支出は大幅縮小です。子育て世代や高齢者層への減税で家計支援効果が期待される一方、約9300億ドルのメディケイド削減で480万人が無保険となる予測もあり、地域福祉や医療財源バランスへは注視が必要です。(出典:2025/07/03 Big Beautiful Bill Clears Congress; Here's What It Does)
インフラ・半導体支出の継続とクリーンエネルギー政策転換
トランプ政権はインフラ投資(IIJA法)、半導体振興(CHIPS法)は大筋維持しつつ、再生可能エネルギーへの直接支援は急速に見直しを進めています。州政府を通じた道路・水道・空港など公共事業は順調に進捗し、2026年以降も高水準が続く見通し。半導体は米国内自社製造(TSMCやMicronなど)への優遇策転換で、国外企業の設備投資も米国誘導が加速。業界は強い再編圧力を受けつつも、データセンター増設やAI用途の“需要爆発”が電力・材料分野にまで波及しています。天井の見えないAIインフラ需要が社会基盤投資の新潮流になる可能性も浮上しています。(出典:2025/07/02 Trump's Spending Plans Target Huge Programs That Favored U.S. Industries. The Upshot For Chip Stocks, Energy And Construction.)
AI半導体覇権とNvidia快進撃──中国規制緩和追い風、巨大資本の攻防
Nvidiaが米株市場で連日過去最高値を更新し、AIチップやデータセンターインフラ投資の中心に躍り出ています。中国向けEDA(設計ソフト)ツールの規制一時解除が追い風となり、米大手ITのAI費用負担も増大。AmazonやGoogle、Metaら“マグニフィセント・セブン”がAI開発拡大で2025年にそれぞれ数兆円規模の資本支出を計画。中国勢の反撃や米中規制リスクも残る中、Nvidiaは利益率・市場評価ともに抜群(EPS成長率69%、強いファンド買いも約40%)です。短期的には関税や輸出規制の不確実性も織り込まれていますが、“IPhone Moment of AI”と称される産業革命的転換点にあると言えるでしょう。(出典:2025/07/03 Nvidia At New High: Is A China Chip-Ban Lift In Sight? Is Nvidia A Buy Or Sell Now?)
輸出規制の緩和とサプライチェーン国際協調の兆し
7月初旬、米商務省がCadenceやSynopsys等EDA設計ツールの対中輸出規制を一部緩和したことで、米中間の貿易・半導体サプライチェーンのリセットが進行中です。この決定により、両社株は5%前後上昇。背景には米中間の大型貿易合意への準備や、中国によるレアアース輸出許可の加速措置も含まれます。EDA緩和は一時的措置という指摘もありますが、企業の国内・国外分散戦略を後押しし、半導体製造やハイテク産業の供給網新戦略形成につながると考えられます。(出典:2025/07/03 Cadence, Synopsys Jump After China Export Curbs Lifted)
テスラとBYD──EV市場構造転換と米中競争の最前線
2025年第2四半期、テスラの車両納入台数は前年同期比13.5%減の384,122台。対して中国BYDは114万台超で3倍規模。BYDは低価格戦略と海外展開強化、最先端の急速充電(5分でフルチャージ)で優位を拡大。一方のテスラは米国減税終了・ブランド力低下で苦戦しつつも、オースティンでロボタクシーの試験運用を開始しAI転換を模索。両社とも利益面では厳しさが増す中、政策・国際環境の変化が市場動向を大きく左右しています。自動車産業の地殻変動を象徴する最新事例と言えるでしょう。(出典:2025/07/04 Tesla Vs. BYD: Tesla Loses Tax Credits Amid Robotaxi Push; BYD's BEV Sales Boom)