米経済が驚くほど好調なことから、来年も米国の金利は欧州に比べて高水準にとどまるとの見方が強まっている。
これは良い問題のように聞こえるかもしれないが、輸出拡大を望むトランプ次期米大統領にとっては厄介な話だ。米国とユーロ圏の金利差は拡大が見込まれ、すでにドルの価値を押し上げている。米輸出を押し上げるとの同氏の取り組みが阻まれる恐れがある。
トランプ氏にとっての問題はパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長にも飛び火しかねない。トランプ政権1期目にも同じような金利差があり、それが頻繁にトランプ氏をいら立たせ、FRB議長ら金融当局者を定期的にバッシングする要因となった。トランプ氏がホワイトハウスに返り咲く中、連邦公開市場委員会(FOMC)と他の主要中央銀行との間に再び乖離(かいり)が生じ、同じことが繰り返されるかもしれない。
Spread of US Interest Rates Over Europe's
Trump complained loudly and frequently about the gap in his first term -- and now it's set to widen again
Source: Bloomberg data based on rates futures as of Dec. 9
調査会社LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は「歩調を合わせないFOMCをトランプ氏が追及しても意外ではない」と指摘。「今回のトランプ政権はより組織化されているため、関税や他国との交渉に対する非常に組織的なアプローチは、恐らくより持続的なドル上昇につながるだろう。金融政策もその一部だ」と述べた。
8年前、第1次トランプ政権発足の直前、FOMCが金利を引き上げた一方、欧州中央銀行(ECB)はゼロ未満に据え置いたため、米欧で金利差が生まれ始めた。トランプ氏は格差の拡大を批判し、FOMCの行動が他の通貨に対してドルを上昇させ、その過程で米国の貿易に打撃を与えたと主張した。
現在、両中銀とも政策緩和を進めているが、ECBが低迷する経済を立て直そうとしている欧州では、より緊急性が増している。米国では、好調な経済成長と堅調な消費者需要を背景に、利下げペースの減速が見込まれつつある。
FOMC当局者は25日に終了する定例会合の後、最新の金利見通しを発表する予定だ。
日ごとに弱体化
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「欧州経済は日ごとに弱くなっているようだ」と述べ、「欧州は米国よりも利下げを切望しており、当面は金利差が拡大するだろう」と指摘した。
FOMCの政策金利はすでにECBの中銀預金金利を1ポイント余り上回っており、ドルは今年に入って対ユーロで5%上昇している。市場の予想では、金利差は来年2ポイント余りに拡大し、ドル高がさらに進む可能性がある。
Trump Slams Interest-Rate Disparity
Notable tweets about interest rates from Trump's first term
Source: Twitter
欧州は近年、大幅な成長を達成するのに苦慮しており、エコノミストは2025年までその傾向が続くと見ている。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後のインフレに対処するための金利上昇は、米国よりも欧州に大きな打撃を与えた。ロシアによるウクライナ侵攻後、欧州のロシアへのエネルギー依存も景気拡大の逆風となった。関税を引き上げるとのトランプ氏の脅しは、欧州経済だけでなく中国など他の主要貿易相手国も対象としており、欧州大陸の成長に対するさらなるリスクとみられている。
一方、米国はコロナ禍前のトレンドを上回るペースで成長を続けている。エネルギーの自給に加え、住宅所有者のほとんどが固定金利でローンを組んでいることから、FOMCの引き締め政策が消費にそれほど大きな打撃を与えることはなかった。
昨年末、エコノミストは2024年の米成長率をわずか1%と予測していた。しかし、米経済の驚くべき底堅さは、トランプ次期大統領の関税と減税がインフレを再燃させかねないとの懸念と相まって、2025年の利下げ観測を着実に後退させている。
より長期により高く
ECBと同様、FOMCも今月0.25ポイントの利下げを実施すると予想されているが、市場は現在、来年の利下げは3回にとどまるとみている。一方、欧州ではもっと多くの利下げが予想されている。
Growth Outlook for US and Europe Diverge
Economists are growing increasingly optimistic about the US and more pessimistic about Europe
Source: Bloomberg surveys.
トランプ氏の政策によっては、この乖離がさらに悪化する可能性もある。インフレを促進する関税は、FOMCに金利をより高水準でより長期に維持させ、結果的に一段のドル高を招く可能性がある。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は今年に入ってから約6.3%上昇し、年間で2015年以来の大幅高になる勢いだ。ウォール街の一部には、このことがドルのバリュエーションを高い水準に押し上げ、2025年後半にドル安をもたらす下地になるとの見方もある。
景気減速に直面してFOMCが最終的に利下げに踏み切ったトランプ前政権時とは異なり、根本的な経済シフトの兆候がいくつか見られる。それは、引き締め気味の金融状況が今後も続くことを意味する可能性がある。
米国ではここ数年、生産性の伸びが顕著に回復しているが、欧州を含む他国ではほとんど回復していない。トランプ氏が反転させると表明しているパンデミック後の移民急増も、企業が消費者の需要に追いつくのに役立った。
これらすべてが、エコノミストが中立金利と呼ぶ、政策が需要を圧迫も刺激もしない金利を押し上げたと思われる。米金融政策当局者はこの推定値がこの1年で着実に高まっており、最終的にパンデミック前よりも高い水準で利下げをやめることを意味するかもしれないと述べている。
米経済の好調が金利やドルに関してトランプ氏にとって逆風になるのであれば、米経済の好調とドル高は、少なくとも関税によるインフレショックに耐えるのに寄与するかもしれない。
ケイトー研究所のスコット・リンシカム副所長(経済・貿易担当)は「裏返せば、米経済が強ければ関税による打撃をより許容できるようになり、ドル高が進めば消費者は関税による打撃をより許容できるようになる」と話した。
原題:
Rate Gap That Triggered Trump’s Fed Bashing Set to Widen Again(抜粋)






