香港の不動産投資で今、脚光を浴びているのが学生寮だ。プライベートエクイティー(PE、未公開株)の大手各社が注目し、不動産エージェントが顧客に勧めるのは、ショッピングモールでもデータセンターでもない。
オフィスや小売り物件の低迷が続く中で、学生寮は香港で最も急成長している不動産投資対象となっている。地元のデベロッパーや大学、海外のファンドが相次いで参入し、中国本土からの留学生という安定した需要を見込んでいる。
ツインルーム(サニーハウス)
Source: Sunny House 金融ハブとしての地位を高等教育の地域拠点へと広げようとする香港政府の取り組みも、学生向け住宅の需要を押し上げている。これにより不動産市場に新たな収益源が生まれ、ニッチな資産クラスへの投資意欲を刺激している。
CBREグループの香港資本市場責任者、甄浚岷氏は「学生向け住宅の供給が極端に不足しており、新築物件はほぼ即座に入居が埋まる」ため、「今最も注目と熱意を集めているセクターだ」と述べた。
甄氏によると、学生が年間契約で家賃を前払いするケースが多く、安定した需要とキャッシュフローを見込めることから、海外投資家やグローバルファンドなど幅広い投資家がこの分野に関心を示している。
米投資会社
ブラックストーンで不動産部門マネジングディレクターを務めるパク・マン・ユエン氏は、シンガポールで最近開かれた会議で、ホテルを学生寮や住宅などに転換する可能性に触れ、香港で最も興味深い投資機会の一つだと述べた。
同氏は、経営難のホテルには、学生寮や集合住宅への転用など複数の戦略を追求できる余地があると指摘した。
不動産サービス会社コリアーズ・インターナショナルのデータによると、香港では1-9月に学生寮に関係する取引が32億香港ドル(約639億円)に達し、前年同期のほぼ2倍となった。今年これまでに1億香港ドル以上の不動産投資件数全体のうち15%を占め、その割合は2024年の7%から大きく上昇している。
供給不足
香港ではここ数年、中国本土出身者を中心に留学生が急増している。政府統計によると、学生向け入境許可承認件数は20年の水準から倍以上になり、24年に7万4466件に達した。コリアーズの推計では、27/28学年度までに約12万床の学生寮が不足する見通しだ。
学生用の施設には非常に強い需要があるものの、多くの物件は水準に達していないと、
宏安地産の鄧灝康CEO(最高経営責任者)は言う。鄧氏はこの市場ギャップをビジネスチャンスとみている。
宏安地産は
アンジェロ・ゴードンと提携し、ホテルを学生向け賃貸住宅「サニーハウス(日新舎)」に改装。全720戸のこの物件は昨年開業し、入居率は98%に達していると鄧氏は明らかにした。
サニーハウスの一角
Source: Sunny House コリアーズによると、アンジェロ・ゴードンのほか、AEWキャピタル・マネジメントや
PGIMリアル・エステートなどの機関投資家は、21年以降で総額46億香港ドル規模の学生向け居住プロジェクトに関与している。
日本の方が魅力的
もっとも、香港は、不動産市況の低迷や、アジア他地域での高い利回りを背景に、投資家の優先順位では上位に位置していない。
米国拠点のあるファンドマネジャーは、香港の学生向け物件への投資を見送った理由として、日本などの方が流動性や投資機会が依然として多いと述べた。
香港の不動産価格は引き続き比較的高水準にある。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド香港の資本市場部門責任者トム・コー氏によると、学生用住宅の利回りは約5%で現在の借入金利とほぼ同水準にあるため、大幅な値引き案件でなければ買い手の関心は限定的だという。
コリアーズの調査部門責任者、キャシー・リー氏によれば、英国やオーストラリアなどでも学生寮の利回りは5-6%程度。
資金調達も課題だ。CBREの調査によると、香港は不動産投資向けの債務ファイナンスが最も困難な主要市場と投資家に認識されている。
香港の商業不動産市場はここ数年低迷が続いており、当局の統計では、オフィスユニットと小売りスペースの評価額が18年のピークからそれぞれ50%、42%下落している。
こうした市況の中で、学生住宅は香港において安定した投資先として注目されている。「安定的で予測しやすい収益をもたらす」と宏安地産の鄧氏は話した。
原題:
Hong Kong Student Dorms Lure PEs in $412 Million Investment Rush (抜粋)
— 取材協力 Low De Wei







