イスラエルがイランに対して開始した戦争を巡り、直ちに検討すべき3つの問いがある。いずれの問いも最も重要な疑問につながる。この戦争によって、イスラエルが掲げる「イランに核兵器を絶対に保有させない」という目標は達成可能なのかどうかだ。
それが可能であるならば、イスラエルのネタニヤフ首相が、約9000万人を抱えるイランという大国に対し、戦闘機を送り込むという決断を下したことは戦略的にも道義的にも正当化され得る。ただ、攻撃対象の性質や民間人への被害の程度による。
イスラエルの破壊はイラン政府が公然と掲げてきた政策であり、数十年にわたり実行されてきた。イラン政府は否定しているものの、同国のウラン濃縮計画が兵器級核燃料の製造を目的としていることは、もはや疑いの余地はない。濃縮度は60%に達しており、民生利用の域をはるかに超えている。この状況下で、イスラエルが小規模な核保有国として独自の抑止力を維持したとしても、こうした敵対的勢力に核兵器を保有させるリスクは容認できない。
もっとも、空爆が実際に成功するかどうかには、大きな不確実性がつきまとう。イスラエルがイランの核開発計画を数年間遅らせる以上の成果を得られない可能性は高い。仮にそうなら、この戦争で確実に生じる流血と予測不可能な結果を正当化することはできなくなる。というのも、その成果は、置き換えられた外交努力と同等、あるいはそれ以下にとどまる可能性があるからだ。2015年の核合意からの離脱や、15日に再開するはずの米国とイランの協議から現実的に導き出せたであろういかなる合意も、同様の効果を持ち得た。しかも、それらは人的被害のほか、地域安定や世界市場へのリスクを伴わない。
したがって、イスラエルの軍事行動が何を達成できるかを分析する際、筆者の3つの問いのうち、最初に問うべきは「なぜ今なのか」だ。ネタニヤフ氏は長年、イランの核燃料濃縮施設を破壊するため米国に支援を求めてきた。しかし、13日未明に単独行動に踏み切った。
明確な理由の一つは、イランの防空システムが過去1年に著しく弱体化したことだ。同様に、イランがレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとガザのイスラム組織ハマスにミサイルを供与することで数十年にわたり構築してきた報復能力も低下している。こうした戦略的環境の変化は、イスラエルと同国空軍にとって、従来よりもはるかに低リスクで攻撃を遂行する機会をもたらした。そして、ネタニヤフ氏が指摘したように、この機会は永遠に続くものではない。
第2の理由も明白だが、より深刻な懸念を伴う。それは、イスラエル首相自身の政治的利益だ。ネタニヤフ氏がガザでの戦争を私的な理由で引き延ばし、拡大させているとの見方は、イスラエル国内で広く共有されており、国外ではさらに根強い。現在の紛争は政権崩壊を回避し、同氏を権力の座にとどまらせている。安全保障と重大な失策に関する検証が、戦後に実施されるのは不可避とみられ、それを先送りする効果ももたらしている。これらの失策が、2023年10月7日にハマスのテロ攻撃がネタニヤフ政権下で成功した原因となった。
ネタニヤフ氏が攻撃を決断したタイミングは、国会で政権に対する不信任決議案を辛うじて退けた直後であり、ガザでの戦闘継続に対する国民の支持が大きく揺らいだ時期と重なるのは、単なる偶然ではないだろう。イランとの衝突は、ガザ政策ではもはや達成できない方法で、国民を再び結束させる可能性がある。動機は重要だ。それがなければ下されないような決断を促す原動力となり得るからだ。
もう一つの重要な論点は、ネタニヤフ氏が始めた戦争において、米国の関与を成功の前提としているかどうかだ。筆者は機密情報にアクセスできず、イスラエル首相の戦略的判断に直接触れる立場にもない。しかし、軍事アナリストの間では長年にわたり、イスラエル単独では限定的な損害しか与えられないとの見方で一致している。成功のためには、米国のみが保有する15トン級のバンカーバスター(地中貫通爆弾)が不可欠だ。
イランの最も高度なウラン濃縮用遠心分離機はフォルドゥの山岳地帯の地下60-90メートルに埋設されているため、破壊するにはこの兵器が必要だとされる。フォルドゥは同国で最も重要な神学校が所在する都市ゴムの南、車でおよそ約1時間の場所に位置する。イランは、さらに南に約1時間の距離にあるナタンズの地上施設に代わるものとして、同地にもっと深い施設を建設中だ。
国際原子力機関(IAEA)の報告によると、13日に200機のイスラエル軍機が攻撃した最初の100の標的には、フォルドゥやイスファハンにある地上核施設は含まれていなかった。ブシェール原子力発電所やナタンズにある最大規模の濃縮施設でも、放射能漏れを示す兆候は確認されていない。これは合理的な対応だといえる。複雑な爆撃作戦の最優先事項は、ミサイル基地やその使用を指揮する司令官を攻撃して防空体制を無力化し、イランの報復手段をそぐことだ。本格的な攻撃目標はその後だ。
トランプ大統領が米国をイスラエルの意向に追随させるかどうかは、ネタニヤフ氏の最大の賭けで、3つ目の問いに関わる。すなわち、イランの最高指導者ハメネイ師がどのような対応を選択するか、あるいはどのような対応が可能なのかにかかっている。
13日朝の時点で、ハメネイ師はイスラエルに対する長距離ドローン約100機の発射を承認したが、その大半あるいは全てが撃墜された模様だ。声明の中でハメネイ師は、イスラエルに対して即時および長期的な報復を宣言し、さらなる措置を示唆した。一方、米国への言及はなかった。これは、イスラエルによる攻撃前にイランが発した警告内容とは対照的だ。その警告では、攻撃があった場合、米国人およびペルシャ湾岸のアラブ諸国の同盟国も攻撃すると宣言していた。
ハメネイ師はそのような行動を取った場合、米軍を戦闘に巻き込むことになると理解しているはずだ。イスラエルの民間施設を標的とした報復も同様だ。したがって、ハメネイ師は慎重な姿勢を取るか、あるいは伝統的な軍事手段によるさらなる行動が困難であるがゆえに、米軍を介入させない可能性もある。その場合、イスラエルは強化されたウラン濃縮施設に対する数週間に及ぶ空爆を単独で展開するリスクを抱えることになり、その成否は不透明だ。
同様の慎重な判断から、ハメネイ師は1968年に調印された核拡散防止条約(NPT)からの離脱を宣言するような大胆な措置に踏み切ることは避けるかもしれない。いずれにせよ、現時点でのリスクは極めて高く、イスラエルにとって結果は不透明だ。イランは先週のIAEAからの非難決議に対し、新たなウラン濃縮施設の建設を発表している。したがって、イラン政権は後退するのではなく、可能な限り早く核兵器を保有する方針を追求する可能性が高い。
ネタニヤフ首相が抱えるリスクは、ハメネイ師が国内で弱腰と見なされない程度に反撃しつつ、米国とそのバンカーバスターを戦闘に巻き込まないという綱渡りを成功させる可能性だ。ハメネイ師がそれを成し遂げれば、イスラエルの攻撃は技術的・軍事的優位性を示しつつも、逆に大きな失敗に終わる恐れがある。今回の選択的な戦争は、イランの核保有国としての台頭を阻止したり遅らせたりするどころか、むしろその実現を加速させる危険性をはらんでいる。
(マーク・チャンピオン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:
Netanyahu’s Gamble Risks a Quicker Iranian Bomb: Marc Champion(抜粋)
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