トランプ米大統領は2期目の就任初日、米国が世界のエネルギーを主導する覇権を確立すると宣言した。だが7カ月が経過した今、その目標は中国が持つ経済・地政学的な力に脅かされつつある。
ロシアが東方への天然ガス輸出を大幅に拡大するために長年構想してきたモンゴル経由の新たな巨大パイプライン「
シベリアの力2」を巡り、中国が今週動いた。
ここ数年この計画に難色を示してきた中国だが、実現に向けた歩みを一歩進めるとともに、他のルートにおける供給能力の拡大にも合意したとみられる。
ガスプロムはモンゴル経由で中国にガスを送る「シベリアの力2」建設に向け、法的拘束力のある契約を締結したと発表
Source: Bloomberg さらにその数日前には、米国の制裁対象となっている北極圏産の液化天然ガス(LNG)貨物受け入れを中国が初めて黙認したことも
判明している。
詳細の多くはまだ不透明だ。ロシア国営ガス会社
ガスプロムは拘束力のある合意だとしているが、中国側はこれを確認していない。中国は公式発表で、包括的なエネルギー協力の枠組みとの説明にとどめている。
また、現時点で中国の北海港に到着した「シャドーフリート(影の船団)」と呼ばれるタンカーによる制裁逃れのLNG貨物は1件のみ。中国が広範な供給元候補を確保したいという従来の方針を転換した可能性も低い。
天津での上海協力機構(SCO)首脳会議に出席した習近平国家主席とプーチン大統領(9月1日)
Photographer: Suo Takekuma/Pool/AFP/Getty Images それでも、ロシアと中国との結び付きが強まっているのは間違いない。「地政学的な意味合いは大きい」とオックスフォード・エネルギー研究所で中国リサーチを率いるミカル・メイダン氏は言う。
「ロシアはガスの買い手を必要としており、長年にわたり東方への転換を掲げてきた。これはロシアにとって大きなガスの販路だ。中国は、米国産LNGと米国の金融取引基盤へのエクスポージャーに対しヘッジしている」と同氏は語る。
シベリアの力2に関する合意は、ロシアのプーチン大統領による4日間の訪中で最も注目された成果の一つ。ロシアが2022年にウクライナ侵攻を始めると、欧州向けガス輸出はほぼ停止。このパイプライン構想は、欧州に代わり得る新たな市場をアジアで開拓する上で不可欠だ。
シベリアの力2経由でガスを供給する予定のガスプロムは、パイプラインの稼働開始時期について明らかにしていないが、ブルームバーグNEF(BNEF)によれば、30年より後になりそうだ。
バーンスタインのニール・ベバリッジ氏らアナリストは「中国が世界最大のLNG輸入国であることを踏まえると、この動きはLNG市場全体の構図を一変させる」と分析。「まだ計画段階にあるLNGプロジェクトにとっては、大きな逆風となる」と指摘している。
中国黒竜江省黒河にある「シベリアの力」天然ガスパイプライン施設
Source: Bloomberg原題:
Putin’s Energy Wins in China Deal a Blow to Trump’s Export Push (抜粋)





