おすすめ記事

トランプ氏の関税引き上げ、ドラマと現実のロードマップを展望する

記事を要約すると以下のとおり。

[MARKOVE row="3" delimiter="。" pre="" end = "
"]

トランプ次期米大統領の
関税好きは、トランプ氏の気まぐれぶりと同じくらいよく知られている。
  大手企業の最高経営責任者(CEO)や中小企業オーナーから、ウォール街の投資家や外国政府高官に至る全ての人々にとって、大統領選の保護主義的なレトリックから政策の現実への道筋を探るのは困難であり、見通しは不確実性に満ちている。
関連記事:
トランプ氏の投稿に備えるエコノミスト-新モデル開発など適応に躍起
  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、今後の展望について想定されるシナリオを作成した。ただ、トランプ氏自身が予測不可能であることを踏まえると、このシナリオはあまり確度が高くない点は否めない。

  BEでは、
トランプ政権1期目の通商政策の実現に寄与した政府高官との対話や、計画がどのように構築されたかに関する理解、政治的・経済的現実の評価に基づいてシナリオを作成。それは30兆ドル(約4510兆円)規模の世界貿易システムにおいて、利害関係者が激動を乗り切るための一助となることを意図している。
  トランプ氏は先月25日にメキシコ、カナダ、中国に
関税を賦課すると警告して為替相場の大幅変動をもたらし、30日には主要新興国で構成される「
BRICS」諸国に対し貿易などで米ドルの代わりに使用する新たな通貨を創設しないという確約を求め、脱ドル化を進めれば100%の関税賦課も辞さない考えをあらためて表明した。
  トランプ氏はこのように公の場で自由気ままに発言しているが、こうしたドラマと、関税が設計されて実施されるまでのゆっくりとしたプロセスとを分けて考えることが課題の一つだ。ドラマはすぐに始まった一方、関税を巡る展開は一段と漸進的なものとなる公算が大きい。
  トランプ氏は大統領選で中国からの輸入品に60%、それ以外の国・地域からの輸入品には10-20%の関税を課す方針を示唆した。しかし、トランプ氏が就任後に実施する関税賦課は、交渉力と関税収入を最大化する一方で、同氏の当選の背景となったインフレ高進から米国の消費者を守るために、順序立てて的を絞ったものになりそうだ。

Bloomberg Economics’ Baseline Tariff Scenario
China faces the most severe increases over the next two years

Source: USITC, UNSD-BEC, USTR, Bloomberg Economics
Note: *US weighted average tariff, based on a Bloomberg Economics baseline scenario and 2023 import patterns. 

  BEは基本シナリオとして、2025年夏を皮切りに計3波の関税引き上げを見込んでおり、対中関税率は26年末までに最終的に3倍となり、それ以外の国・地域に対しては一段と小規模な引き上げが行われると想定。消費者物価に直接影響を与えない中間財や資本財を中心とし、これらを合わせると26年末までに米国の平均関税率は現行の3倍の約8%になると推計する。

  実際にこうした展開となれば、米中貿易の急減を含め、米国の輸出入が世界全体に占める割合は現在の21%から18%に低下する。米国の成長は鈍化し、
インフレ動向は関税引き上げとドル高による相反する流れに直面。強気の株式市場は弱気のハードルを越えなければならず、失業率は上昇する。ただ、トランプ氏が選挙戦で掲げた空前の高関税の極端な影響は回避される。
  トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、メキシコとカナダが米国境を越える合成オピオイドの一種、フェンタニルと移民を取り締まらなければ就任初日に25%の関税を課すと脅し、中国がオピオイドの輸出を阻止しなければ10%の追加関税を賦課するとした。これらの措置により、全体的な関税はBEのシナリオで想定されているのと同レベルになり、中国への重点の置き方も同じになる。

米シアトル港に並んだ韓国・起亜自動車の乗用車
Photographer: David Ryder/Bloomberg  先週の一連の投稿は、トランプ氏の予測不可能な言動と、関税が最終的にたどるさまざまな道筋を想起させる最新の出来事に過ぎない。
自動車をはじめとする製造業のサプライチェーンが南部と北部の国境を横断している米経済にとって、同氏の投稿の脅しが実行された場合の影響は深刻だ。
  冷静な政策よりも注目を集める政策を好むトランプ氏をはじめ、注意点は山ほどある。また、トランプ氏がホワイトハウスに戻れば、国家非常事態を宣言するなど、関税を迅速に課すために利用できる法的権限は数多くある。しかし、これまでの事例が示すように、トランプ氏は金融市場や投資家を動揺させることも警戒しており、投資家は同氏の関税政策よりも減税や規制緩和の方に関心を向けている。

Trump’s Trade Toolkit

Source: Bloomberg Economics

  そして、関税の設計と実行を監督するチームの問題もある。

トランプ氏はスコット・ベッセント氏を財務長官に指名すると発表
Photographer: Stefani Reynolds/Bloomberg  スコット・ベッセント氏を次期財務長官に指名するトランプ氏の決定は、ウォール街に配慮し、経済の混乱を避けて市場の安定を優先させるもので、関税へのハードルではないしにしても少なくとも戦略的なブレーキと解釈されている。
  マクロヘッジファンド、キースクエア・グループの創設者であるベッセント氏は、減税を相殺するための政府歳入の増加と、世界経済の不均衡への対処という二つの目的を果たすために、関税を支持する意向を示している。
関連記事:
波乱の米財務長官人事、トランプ氏はウォール街の意向尊重

  またベッセント氏はトランプ氏の経済優先課題の一つとして、米国の国内総生産(
GDP)伸び率を3%を上回る水準に引き上げることを挙げており、関税引き上げによってサプライチェーンに混乱が生じたり、消費者に打撃が及んだりした場合には達成が困難になる。

Trump’s Trade Team
Key Posts Are Filled to Design and Manage Tariff Rollout

Source: Source: Bloomberg/Getty Images; King & Spalding/Congress.gov; Chip Somodevilla/Getty Images; Bloomberg/Getty Images; Getty Images; Tom Williams/Getty Images

  このほか、輸入品と中国に対する米国のアプローチを全面的に見直すことを長年提唱し、トランプ政権1期目の関税措置を実施したロバート・ライトハイザー氏が、新政権で正式な地位を得るかどうかについても重要な疑問がある。

商務長官への指名が発表されたハワード・ラトニック氏
Photographer: Hollie Adams/Bloomberg  トランプ氏は先週、米通商代表部(USTR)代表だったライトハイザー氏の長年の側近で、首席補佐官を務めたジェイミーソン・グリア氏をUSTR代表に指名すると発表した。ライトハイザー氏は77歳で、米国の政策立案において最も強硬な保護主義者であるが、自分の部下が政権入りすることで落ち着くかもしれない。
関連記事:
米国の次期USTR代表は対中強硬派、「戦略的デカップリング」主張
  ライトハイザー氏は商務長官に起用されることもなかった。このポストは、財務長官の座を巡ってベッセント氏との激しい売り込み合戦に敗れたハワード・ラトニック氏が就くことになった。
  ウォール街のベテランのラトニック氏が「関税と貿易の政策課題の解決をリード」し、USTRを監督するということだが、ラトニック氏は投資銀行キャンターフィッツジェラルドのCEOであり、米国の通商政策に関する経験はほとんどない。
ディール
  BEのシナリオによれば、25年半ばの関税引き上げは、トランプ氏が政権1期目の17年8月に開始し、バイデン政権が中国からの輸入品に対する関税を維持するために使用した通商法301条調査の既存リストを使用することになる。当初の予想では、パジャマやボールペンなど幅広い消費者向け製品に15%の追加関税が課される。
  今のところ米中の話し合いの見通しは良くない。米側の多くは、和解よりも中国に対する一層厳しい貿易措置を望んでいると見受けられる。トランプ氏がその陣営に入るかどうかは、同氏のディールメーキング(取引)の過去を考えると未解決の問題だ。

  BEのシナリオでは、協議が不調に終わった場合、資本財と中間財を中心とする中国からのその他の輸入品に対する関税率は26年9月まで段階的に引き上げられ、現在25%の追加関税率が最終的には3倍の75%になる見通しだ。

Trump Tariff Strategy
Tariff lists targeted goods where the US wasn’t very dependent on China

Source: USITC, UNSD-BEC, USTR, Bloomberg Economics.
Note: *2017 data

  一方、トランプ政権1期目の大統領経済諮問委員会(CEA)委員長として、対中関税リストの作成を監督したケビン・ハセット氏にちなんで、元スタッフが今でも「ハセット・アルゴリズム」と呼んでいる方式がある。この方式の下ではインフレとGDPへの影響を最小限に抑えるため、主に部品と機械に課税の対象を絞った。また、米国のバイヤーが代替品を見つけることができる商品に重点を置いていた。
  トランプ次期大統領は、ハセット氏をホワイトハウスの経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)委員長に起用することにした。関税政策の詳細策定に当たってベッセント氏の財務長官ポストに匹敵する影響力を持つ可能性のあるポジションだ。
  選挙後の世論調査によれば、トランプ氏の関税政策は好評だが、それよりも優先されるのは生計費の抑制だ。トランプ氏が大統領選で勝利した理由の一つに、バイデン政権時代のインフレ加速に対する国民の怒りがあることを考えると、トランプ氏の顧問は慎重を期すと考えられる。

Trump’s Initial Tariffs Avoided Consumer Goods
Tariffs aimed at capital and intermediate goods helped limit the inflationary sting

Source: USITC, UNSD-BEC, USTR, Bloomberg Economics.
Note: *Shows distribution of import value across product type by trade-war list.

  他方でトランプ氏は、希望する減税の財源ギャップを埋めるために、関税による歳入増も必要としている。17年の減税・雇用法(TCJA)を延長するだけでも26年から約5000億ドルの追加歳入が必要となる。BEのシナリオでは、関税収入で約2500億ドルを調達し、TCJA延長による歳入ギャップの半分を埋め、残りは歳出削減で賄う可能性がある。
  ベッセント氏は大統領選期間中のブルームバーグとのインタビューで、10%の一律関税と既存の中国関税の倍増により10年間で2兆5000億ドルから3兆ドルの歳入が得られるとの試算を示した。これは他の推計とほぼ一致する。
  同氏はまた、関税によって米国での生産が増えることで、より広範な歳入増につながるとしており、トランプ氏が提案するように法人税率を15%に引き下げたとしても、このようなリショアリング(製造拠点の国内回帰)によって国内税収は「大幅に増加する」と説明している。
原題:
A Roadmap Through the Drama and Realities of Trump’s Trade War(抜粋)

[/MARKOVE]

[紹介元] ブルームバーグ マーケットニュース トランプ氏の関税引き上げ、ドラマと現実のロードマップを展望する

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Xでフォローしよう

おすすめの記事