ウォール街でかつて資金を安定的に集めていたプライベートエクイティー(PE、未公開株)とプライベートクレジットの資金調達が鈍る一方、ヘッジファンドや暗号資産(仮想通貨)を活用した投資戦略がオルタナティブ投資の世界で勢いを増している。
ここ数年、さまざまなプライベート市場に巨額の資金が流れ込み、各ファンドは記録的なペースで資金調達を終え、資金が次にどこへ向かうのかに関する議論が起きることもほとんどなかった。
しかし過去1年間でその勢いに陰りが見え始めており、業界幹部らは米国の確定拠出型年金401kプランへのアクセス拡大を働きかけている。401kプランを通じたPE投資が可能となれば、米国の退職年金から数十億ドル規模の資金が流入する可能性があるためだ。
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現在、プライベート市場での資金調達ペースはここ数年で最も低調となっている。投資先からの資金回収の滞りなどが主因だ。
JPモルガン・チェースのデータによると、プライベートクレジットの資金調達は少なくとも2018年以降で最も低調な年となる見通し。資金調達に要する期間は2年近くに及び、金融危機以降で最長となっている。調査会社ピッチブックによれば、25年1-3月のPE資金調達額はグローバルで前年同期比35%減の1160億ドル(約17兆円)に落ち込んだ。
一方、ヘッジファンドには過去10年で最大の資金流入が見られ、かつては投資対象として本格的にみなされていなかった暗号資産も、ファミリーオフィスや機関投資家から新たな資金を集めている。
こうしたデータは、投資家がどこまで非流動性資産を許容し、どれだけ長期にわたり維持できるかを再評価しつつある移行期にあることを示唆している。
もっとも年金基金がバイアウト投資によって取得した持ち分を売却してマルチストラテジー型ヘッジファンドに乗り換えているわけでも、暗号資産がPEに取って代わっているわけでもない。
ただ、プライベート市場の勢いが鈍っているのは確かで、有力大学でさえもプライベート資産の売却を検討しており、動きの速い資金が短期間で運用可能な戦略に流れている。
JPモルガンのニコラオス・パニグリツグルー氏は「オルタナティブ資産クラスの中では、デジタル資産とヘッジファンドへの資金流入が今年に入り加速している。PEやプライベートクレジットに見られる資金調達の低迷とは対照的だ」と語った。
JPモルガンの分析によれば、ウォール街は25年に入り、すでに6900億ドルをオルタナティブ資産に投じている。その中でもPEは依然として中心的な存在だが、資金調達の勢いはここ数年の記録的なペースと比べて明らかに鈍っており、ディールメーキングの停滞や投資家への資金還元の難しさが影響している。
パニグリツグルー氏は、分配の減少や新規株式公開(IPO)の減速、キャピタルコール(ファンドが投資資金の払い込みを投資家に要求する行為)が分配額を上回っている状況が「資金循環のボトルネック」を招いていると分析する。
プライベートクレジットの資金調達も今年に入り減速している。JPモルガンによると、7月22日までの資金調達額は700億ドルとオルタナティブ資産全体の流入額の1割にとどまり、少なくとも15年以来の低水準となった。
パニグリツグルー氏はレバレッジローンに対する需要や銀行によるリスクの高い融資などを考慮すると、パブリッククレジットとの競争の高まりが背景にあるとみている。
一方、22年、23年と資金流出が続いていたヘッジファンドは、ここにきて再び関心を集めている。JPモルガンの分析によると、25年4-6月の流入額は約250億ドルと14年以来最大となった。1-6月(上期)合計では370億ドルに達しており、大半は運用資産が50億ドル超の大型ヘッジファンドに流れている。中でもマルチストラテジー型ファンドが安定した資金流入を維持している。
BNPパリバが資金配分担当者を対象に年初に実施した調査では、ヘッジファンド資産への投資額が24年に約200億ドル上乗せされており、その約3分の1はPEやプライベートクレジットからの資金だった。また回答者の約3分の2が今後もヘッジファンドへの配分を増やす意向を示した。
BNPパリバのグローバル資本導入・コンサルティング部門グローバル責任者マーリン・ナイドゥ氏は「ヘッジファンドは、プライベート市場からパブリック市場への資金シフトの恩恵を受けている」と指摘。「ヘッジファンドは一般的にパブリック資産への投資が多く、本質的に流動性が高い」と説明した。
暗号資産への資金流入は、オルタナティブ資産市場の中でも最も伸びが顕著だ。流入額は過去最高だった昨年の850億ドルに続き、今年7月22日までに600億ドルに達している。
ステーブルコインの規制枠組みを整備する「ジーニアス(GENIUS)法」の成立など暗号資産に有利な規制環境が、プライベート、パブリック両市場での暗号資産への投資を後押ししている。
暗号資産関連のベンチャーキャピタルによる資金調達も、2年間の低迷を経て回復傾向にあり、
サークル・インターネット・グループなどのIPOも投資家心理の改善につながっている。
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原題:
Private-Asset Boom Cools as Hedge Funds, Crypto Nab New Billions(抜粋)





