ウォール街はここ数カ月、トランプ大統領の貿易戦争や米連邦準備制度理事会(FRB)の金利維持姿勢をさほど意に介さずにいた。その背景にあったのは、堅調な経済が市場を支え続けるとの自信だ。
今週、その自信が崩れ始めた。雇用の伸び鈍化とトランプ氏による新たな関税措置を受け、投資家心理は動揺。パウエルFRB議長に対する利下げ圧力は強まり、ホワイトハウスの保護主義的な通商姿勢に対する警戒感も再び浮上している。
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1日発表された7月雇用統計で労働市場の急減速が示されたことで、約3カ月にわたって続いてきた市場の平静は失われた格好だ。投資家は安全資産である米国債に逃避し、2年債利回りは急低下して3.7%を一時割り込んだ。
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来月にも米利下げが実施されるとの観測が一段と強まり、外国為替市場ではドルが下落。円は対ドルで一時2%余り上昇し、
1ドル=147円50銭まで円高・ドル安が進んだ。短期金融市場では年内2回の利下げが完全に織り込まれ、9月の確率は80%へと
急上昇した。
「今回の雇用統計は『悪いニュースは悪いニュース』に他ならない」とクリアブリッジ・インベストメンツのジェフ・シュルツェ氏は指摘。「雇用の創出ペースがほぼ停滞するなか、今後は関税という逆風も控えており、数カ月以内に雇用者数が減少に転じる可能性も高まっている。それがリセッション(景気後退)への懸念を呼び起こす恐れがある」と警鐘を鳴らした。
地政学的リスクの高まりも市場全体のリスク回避ムードを強める要因となった。トランプ米大統領はこの日、ロシアの脅威を指摘した上で、
原子力潜水艦2隻を「適切な海域」に配備するよう命じたと明らかにした。
出口を模索
7月の米ISM製造業指数が
9カ月ぶりの低水準に沈んだことも、FRBが今後数週間や数カ月で直面する課題を浮き彫りにするものだ。トランプ政権は、パウエル議長の動きが遅すぎるとの
批判を一段と強めている。
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テーミス・トレーディングの株式トレーディング共同責任者、ジョゼフ・サルッツィ氏は「多くの投資家が出口を探し始めている。過熱の兆しも一部に見られる」とし、「雇用統計の弱さは9月の利下げ観測を強めるものだが、FRBの対応が遅れすぎているのではないかとの懸念もある」と続けた。
雇用統計発表後の市場の動きは、7月の相場展開からの転換を示唆している。7月は予想を上回る企業決算や堅調な経済を背景に
ドルが上昇し、米国株は他国・地域の株式を大きく上回るパフォーマンスとなっていた。
投資家が米経済の実態把握に動くなか、各市場でボラティリティーが一気に高まり、シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は節目の20を上回って推移している。
「関税や金利上昇による景気減速の影響を見極める過程で、投資家が過度な楽観論に傾いていた可能性がある」と、アリアンツ・インベストメント・マネジメントのチャーリー・リプリー氏は指摘する。
「関税に起因する経済の冷え込みは現実のものとなり始めている。労働市場の軟化もFRBの注目を集めるはずだ。近年の米金融当局の政策対応に後追い傾向があることを踏まえれば、数カ月以内に彼らが行動に出る可能性は高まっていると見るべきだ」と同氏は語った。
アメリカン・センチュリー・インベストメント・マネジメントでマルチアセット戦略の最高投資責任者(CIO)を務めるリッチ・ワイス氏は、市場には「財政赤字、関税、インフレといった大きなリスク要因が依然として存在している」と指摘。「トランプ大統領自身が市場全体に不安定さをもたらしていることを考慮すると、なお一定の慎重姿勢を維持すべきだ」と述べた。同氏は、過熱気味のバリュエーションを理由に米国株の投資判断をアンダーウェートとしている。
米資産運用会社コーエン・アンド・スティアーズでマルチアセット戦略を統括するジェフリー・パルマ氏は「ここ数カ月は経済成長が堅調で、関税への懸念もやや和らいでいたが、弱い雇用統計と関税の先行き不透明感が重なって対応が難しくなっている」と語り、「この状況は、先行きに大きなリスクが控えていることを改めて思い起こさせる」と続けた。
原題:
Wall Street’s Months-Long Truce With Washington Is Shattering(抜粋)
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