米経済がいわゆるハードランディングに直面するリスクについて、過去数年にわたり私は
悲観的になり過ぎていた。その見解に至る判断の多くは正しかったが、景気の先行きがそのような結果になるか、なお大いに疑わしい。
私の推論は次のようなものだった。
1.米連邦準備制度が平均インフレ率ターゲットの新たな枠組みをいかに実行に移すかで、金融引き締めは過度に遅れるだろう。インフレ率が2%を上回り、その水準に当面とどまると予想され、最大限の持続可能な雇用が実現するまで、ゼロ金利を解除しないと連邦準備制度が表明していた経緯を思い出してほしい
2.しかし行き過ぎた金融緩和の下で、労働市場はタイトになり、景気は過熱するだろう
3.連邦準備制度はその後、金融政策を景気抑制的にするため、かなりの引き締めが必要になるだろう
4.そして失業率は(3カ月平均が過去12カ月の最低値との比較で)少なくとも0.5ポイント上昇し、「
サーム・ルール」に基づくリセッション(景気後退)の始まりが示唆されるだろう
大部分の展開は私の予想通りだったが、サーム・ルールのトリガーが発動されたとはいえ、リセッション入りはなお大いに疑わしい。景気後退リスクは通常より高いが、景気下降を引き起こすことなく、連邦準備制度がインフレを沈静化させる可能性は十分ある。
まず第一に米景気はかなりの前進の勢いを維持している。今年4-6月(第2四半期)の実質GDP(国内総生産)成長率(確定値)は
年率換算で前期比3%となり、アトランタ連銀の「GDPナウ」によると、7-9月(第3四半期)の予測は現時点で2.5%となっている。
ダドリー氏はハードランディング予測の誤りを認めた
Source: Bloomberg 第二に労働市場の悪化は比較的穏やかな形で起きている。失業率は2023年の3.4%という低水準から
4.2%(今年8月時点)に上昇したが、レイオフではなく労働力人口の急増が主因だ。
第三にサーム・ルールは過去の経験が示すほど絶対的でないかもしれない。0.5ポイントという基準値が、1960年以降の米国の経験則に基づいて決定されたと認識することが最も重要だ。景気循環の観察結果はそれほど多くない。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が最近の記者会見で言及した通り、サーム・ルールは「統計的規則性」であり、経済法則ではない。労働力人口が急速に増加しているため、今回は実際の基準値がより高いのかもしれない。その場合、基準値を突破しないよう連邦準備制度が十分速いペースで金融緩和に動けば、リセッションを招く自己強化のダイナミクス(力学)は回避されるだろう。
4番目として、ほとんど誰が見ても金融政策は今も引き締まった状態だが、金融環境は過去1年で大幅に緩和された。株価は過去最高値を更新し、債券利回りは低下し、信用スプレッドは縮小した。
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ソフトランディング(軟着陸)の場合、連邦準備制度の金融政策は緩和的でなく、中立的になると思われる。先物市場を見る限り、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標が26年初めに2.9%前後で底入れする見通しをトレーダーは織り込んでいる。軟着陸シナリオでは、誘導目標(現行4.75-5%)が3.5%を下回ることはないのではないか。
ハードランディング・シナリオの下では、株式と債券の見通しが逆転する。企業利益が期待外れとなって株価は下落し、連邦準備制度が予想以上に短期金利を引き下げることで金融政策は緩和的となり、債券利回りは低下する。このシナリオでは、FF金利誘導目標は恐らく2-2.5%前後が最終到達点となろう。
鍵を握るのは労働市場だ。雇用情勢がさらに悪化し、失業率が上昇し続けるようであれば、サーム・ルールが具現化する自己強化の力学が作用し、ハードランディングに見舞われる。振り返って見れば、0.5ポイントの基準値が引き続き有効か、幾分高い基準値を通じて有効になるか、どちらかの判断になるだろう。
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(ニューヨーク連銀の前総裁、ウィリアム・ダドリー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:
How My Hard Landing Forecast Turned Out Wrong: Bill Dudley(抜粋)
This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
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