後払い決済サービスに特化する英スタートアップ、
Zilch(ジルチ)テクノロジーが新規株式公開(
IPO)を実施するなら、地元ロンドンのはずだ。しかし、企業価値20億ドル(約3040億円)と評価される同社が米国を選択する可能性が現実味を帯びる。
豊富な資金に引き付けられ、ニューヨーク市場でより高いバリュエーション(評価)を追い求める欧州企業が増えているが、Zilchも流れに乗ることになる。新興企業は成長のための資金調達で苦労が多く、欧州市場は企業のニーズに応えず、ライバルと互角に渡り合う助けにならないと不満が広がる。
Zilchの共同創業者フィリップ・ベラマント最高経営責任者(CEO)は「解決すべき二つの課題がある。事業を構築すること、収入と利益をどれだけ生み出せるかがまずあり、株式価値が次に来る。奇妙なことだが、残念ながら二つは必ずしもリンクしていない」と話す。
米株の株価収益率は平均22倍で取引されており、欧州株に対するプレミアムは60%近い。ソフトバンクグループ傘下の半導体設計会社
アーム・ホールディングス、後払い決済サービスを提供するスウェーデンのフィンテック企業
クラーナ・グループも、米国を主な上場先として選択した。フランスの
トタルエナジーズや英WPPもNY市場上場に前向きだ。
フィリップ・ベラマント氏
Photographer: Jose Sarmento Matos/Bloomberg
資本市場を巡る恐ろしい話は、株価や投資家の利益にとどまらない。成長資金の確保に企業が走れば、本社や経営陣、雇用も欧州から奪われかねない。企業がとどまる十分なインセンティブがなければ、次世代のアイデアや実際的価値の維持に必要な企業を失うことになる。
投資に影響すれば、欧州は米中という超大国に挟まれ、十分な競争ができない停滞した経済となる。
欧州の製造業は既に不振にあえぎ、昨年10-12月(第4四半期)はドイツとフランスがいずれも前期比マイナス成長となった。成長鈍化は税収への打撃を意味し、財政が逼迫(ひっぱく)する欧州諸国にとって、これほど困ることはない。
競争激化で危機はより差し迫ったものになりつつある。先月開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)でも、「米国第一主義」を掲げ、規制緩和と減税、関税発動を公約するトランプ米大統領の復帰により、圧力が増したという認識が広く
共有された。
国際通貨基金(IMF)は1月17日に発表した世界経済見通し(WEO)で、2025年の米成長率を2.7%と予測し、主要国・地域で最も大きく上方修正した。2020年代の残りの期間を通じて、欧州を上回る成長が続くとIMFは予想する。
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The Stoxx 600 is valued close to emerging market levels
Source: Bloomberg
そんな時期だからこそ、商取引を円滑に進めるため、欧州は市場を必要としている。だが政治的、文化的、地理的阻害要因が影響し、市場の流動性は低く、取引所やクリアリングハウス(清算・決済機関)が点在するパッチワークの状態が続く。英国の欧州連合(EU)離脱が分断にさらに拍車を掛けた。
ゴールドマン・サックス・インターナショナルのエクセキューションサービシズ(欧州・中東・アフリカ)責任者ボビー・モラビ氏は「今やグローバル競争の様相を呈し、企業は自分たちの資本が歓迎され、報われ、高いリターンを生む場所を選ぶだろう。その脅威はこれまでより実存的で、はるかに身近だ」と指摘した。
原題:
Broken Markets Hold Back Europe as Trump Amps Up the Pressure (1)(抜粋)





