2月3日の真夜中を少し過ぎたころ、イーロン・マスク氏は、米政府支出削減の矢継ぎ早の取り組みで最初の大きな成果を挙げた喜びを実感していた。トランプ大統領の就任からわずか2週間足らずだが、米国際開発局(
USAID)をいきなり閉鎖するという早業を成し遂げた。
しかし、新組織「政府効率化省(DOGE)」の少数部隊が成功したかどうかは、200マイル(約322キロ)離れた場所、すなわちウォール街が付ける成績表で最終的に評価されるとマスク氏は気付いた。債券投資家は、トランプ氏の当選前と当選後に利回りを大幅に押し上げ、今では再び下げることを拒んでいるようだ。
米国際開発局への議員らの立ち入りを阻止する国土安全保障省当局者(2月3日)
Photographer: Jason C. Andrew/Bloomberg そのメッセージをマスク氏ははっきりと受け取った。債券市場は同氏を疑い、膨れ上がる財政赤字と増え続ける国家債務を十分抑制できるペースで歳出削減が進んでいるという証拠をさらに要求した。これが間違いであり、いずれ後悔すると同氏は反論した。
「債券市場はわれわれが達成できると確信する節約を現時点で反映していない。債券の空売りは、間違った賭けだと私は思う」とマスク氏はX(旧ツイッター)での討論で主張した。
トランプ氏が「リアルタイム国民投票」の場として、株式市場に執着していることはよく知られている。だが2期目のスタートでは、マスク氏とベッセント財務長官の助言もあって、米10年国債利回りという別の指標にかなり関心が移っている。
それにはもっともな理由がある。米連邦準備制度は短期金利を強力にコントロールし、株式市場のセンチメントに大きな影響力を持つが、住宅ローン金利や米大手企業の資金調達コストを主に決定するのは、10年国債利回りだ。長期金利を引き下げれば、何百万人もの米国人が長年欲しがっていた家を購入できるようになり、その過程で経済成長の加速と、政府の年間利払い急増の抑制にもつながる。
US Spends Biggest Share of Income on Debt Since Early 1990s
Source: US Treasury
トランプ大統領の就任後、10年国債利回りは4.3-4.7%の間で変動した。大統領選直前は4.3%弱、DOGE創設をマスク氏がトランプ氏に初めて提案した昨年夏にさかのぼると3.8%前後で、いずれも今の方が高い。これは政権が直面するさまざまな問題を反映していると長年の市場ウオッチャーは指摘する。
マスク氏のDOGEスタッフによる無秩序な活動や深夜の投稿、週末の劇的な政府機関「乗っ取り」にもかかわらず、これまでの支出削減はささやかであり、疑わしいケースさえある。
DOGEは政府支出を550億ドル(約8兆2000億円)削減したと胸を張るが、ウェブサイトに掲載された項目別内訳を見る限り、その3分の1に過ぎない。仮に全体の数字が正しいとしても、7兆ドルの年間予算の1%にも満たない。前会計年度に
1兆8000億ドルに達した赤字に有意な影響を与えるにはあまりに小さい数字だ。
イーロン・マスク氏(首都ワシントンで、2月13日)
Photographer: Stefani Reynolds/Bloomberg 持続可能性の問題も存在する。DOGEの動きを押し戻すため、多数の訴訟が提起された。マスク氏とトランプ氏は当初、容易なターゲットに主に狙いを定め、USAIDや消費者金融保護局(CFPB)の閉鎖に動いた。はるかに大きな節約効果が期待されるが、政治的にデリケートな国防や社会保障分野のプログラム閉鎖は、それとは別問題だ。
米財務省の元当局者、ペンシルベニア大学ウォートン校のケント・スメタース教授(経済学)は「これまで実際の削減はわずかで、比較的大きい削減は主に訴訟によって抑制されてきた。財政赤字拡大に直面する債券市場をなだめるには十分でない」と見解を示す。
マスク氏とDOGEへの抗議活動(NYのテスラ・ショールームで、2月15日)
Photographer: Stephanie Keith/Bloomberg DOGEチームが例えば年間5000億ドルの節約という驚くべき成果を実現したとしても、さらに大きな障害が待ち受けているかもしれない。トランプ氏が掲げる別の政策目標には、法人や勤労者を対象とするあらゆる減税が含まれ、財政赤字の再拡大や新たなインフレ圧力増大につながりかねない。
トランプ政権が発動する関税も、高止まりするインフレ率をさらに押し上げる恐れがある。1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比3%と物価目標の2%を上回り、連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ再開はまだ先という臆測が広がった。
ベッセント財務長官が述べる通り、連邦準備制度の金融政策より10年国債利回りの方が、この政権には重要かもしれない。それでもフェデラルファンド(FF)金利誘導目標と長期金利は密接に連動している。連邦準備制度が利下げムードでなければ、長期金利を政府が押し下げることは難しい。
米国債相場の下げを見込む市場関係者の1人、アルファシンプレックス・グループのチーフストラテジスト、キャスリン・カミンスキー氏は、減税から関税に至るまでトランプ政権のポリシーミックス全体がインフレを誘発すると捉え、「米連邦準備制度が利下げに動く理由はほとんどない。債券市場で長期金利は引き続き上昇傾向にある」と分析した。
The 10-Year Yield Is In Focus for Trump's Team
Source: Bloomberg
マスク氏とホワイトハウスにコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。
原題:
The Bond Market Isn’t Fully Buying What Musk’s DOGE Is Selling(抜粋)
(マスク氏とホワイトハウスの反応を追加して更新します)






