イスラエルとイランの武力衝突の激化を受け、中東地域を往来する貨物や輸送する船舶を対象とした海上保険の保険料がさらに上昇したり、戦争被害の補償が停止されたりするリスクが高まりつつある。国内大手損害保険会社は情勢を見極めた上で必要な対応を進める方針だ。
国際間を輸送する貨物を対象とする「外航貨物海上保険」では海上輸送中の戦争リスクを保険会社が補償しているが、「欧州や中東へ向かう貨物が紛争地域を通過する間の戦争リスクは、今後引き受けを行わないと判断する可能性がある」と英保険仲介
エーオンの日本法人で企業向け海上保険を担当している吉武義道氏は指摘する。
引き受けが停止された場合、海上輸送に伴う損害リスクが高まることから、荷主側の輸送判断に影響を及ぼす可能性がある。財務省の貿易統計によると、昨年の日本の原油輸入は9割超を中東地域に依存。重要なシーレーン(海上交通路)に混乱が生じれば、エネルギー供給に影響が及ぶ恐れもある。
イスラエルは13日、イランの核や弾道ミサイル関連施設への空爆を実施。これに対してイランは、ドローン(無人機)やミサイルによる複数の報復攻撃を行うなど、応酬が続いている。 ホワイトハウスのレビット報道官は19日の会見で、トランプ米大統領はイランを攻撃するか2週間以内に
決定を下すと発言するなど、現時点で停戦の兆しは見えない。
2023年10月にはイランが支援するイスラム組織ハマスによる襲撃を受けたイスラエルがパレスチナ自治区ガザに
侵攻。吉武氏によると、日系保険会社では紛争地域における戦争リスクの保険引き受けを制限したほか、外資系の保険会社の中にはすでに輸送が開始された貨物に対しても、引き受けを
キャンセルしたケースがあったという。
東京海上ホールディングスの広報担当者は、中東における危険水域を航行する場合には情勢に応じて割増保険料の適用をすでに実施しており、引き続き状況を注視しながら対応していくとコメント。
SOMPOホールディングスの広報担当者は、中東情勢の悪化に関して状況を十分注視し、情勢に応じて保険の引き受けを判断すると述べた。
MS&ADインシュアランスグループホールディングスの広報担当者は、近年の中東情勢の緊迫の高まりを受けて、イスラエルや周辺諸国の海域では戦争危険を担保する各種保険の引き受けを既に原則停止しているとコメントした。
世界最大級の保険ブローカー、
マーシュのグローバル海運・貨物・物流部門責任者マーカス・ベイカー氏によると、現在、紅海やペルシャ湾を航行したり、イスラエルの港に入出港したりする貨物船に関する戦争リスク保険料率に一部
変動が見られる。
紅海では0.2-0.25%から0.25-0.3%に、ペルシャ湾では0.125%から0.2%へとそれぞれ小幅に上昇した。一方、イスラエルの港に関連する保険料率は0.2%から0.7%へと大幅に引き上げられた。
同氏によると、大手の保険引受業者の多くは、これまで48時間有効だった見積もりの有効期間を24時間に短縮した。ただ、現時点では緊迫した情勢が一部地域内にとどまっていることから、引き続き貨物輸送を継続するための保険契約は成立しているという。
23年に中東情勢が悪化した影響で、現在も中東近海を輸送する多くの貨物船は紅海とスエズ運河の航路を避け、喜望峰経由でアフリカ大陸を
迂回(うかい)している。一方、国内最大の発電事業者JERA(
ジェラ)の可児行夫会長は18日、都内でのエネルギー関連イベントで、液化天然ガス(LNG)の10%をホルムズ海峡経由で輸入しているとして、情勢を注視していると述べた。
関連記事
トランプ大統領、イラン攻撃巡り今後2週間で決定へ-ホワイトハウス
ホルムズ海峡封鎖なら「多大な影響」、緊急計画を用意-シェルCEO
イランは降伏しない、ハメネイ師がトランプ氏の要求に反発
[/MARKOVE]





