日本と中国はアジアの二大経済大国であり、域内最大の貿易相手国同士でもある。だが両国の間には長年にわたる激しい競争の歴史があり、経済的な結びつきを安定的に維持するのは難しい面がある。
日中の間では、尖閣諸島周辺での中国の活動活発化、貿易制限、台湾海峡の平和と安定に対する懸念など、さまざまな問題がくすぶり続けている。
今月に入ってからは高市早苗首相が国会答弁で台湾有事について、戦艦を使い武力の行使も伴うものであれば、「存立危機事態」になり得るケースだと考えると発言。これを受けて緊張が高まった。存立危機事態の認定は、友好国を防衛するために日本が自衛隊を派遣する際の法的根拠となるため、重要な意味を持つ。中国は高市氏の発言を内政干渉だと非難し、撤回を求めたが、日本側は自国の立場を堅持している。
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その後、中国政府は自国民に対して日本への渡航を控えるよう警告を発し、中国国営放送と関係があるSNSアカウント「玉淵譚天」はこの週末に、「中国は実質的な報復措置に向けて十分な準備を整えた」と警告する論評を掲載した。投稿では、制裁の発動や経済・外交・防衛関係の停止、貿易制限などを報復の手段として示唆している。
高市早苗首相と習近平国家主席(韓国で10月31日)
Source: Japan Pool/Jiji Press/AFP/Getty Images日中関係の歴史
両国は何世紀にもわたり、北東アジアにおける政治・文化の二大勢力として存在してきた。互いの言語、経済発展、食文化に影響を与え合ってきたが、19世紀後半に貿易が拡大する一方で政治的な摩擦も強まり、数々の武力衝突へと発展した。
日本は中国の一部を侵略・併合し、1930年代から第2次世界大戦にかけては、南京事件などを含む軍事行動を展開した。これらの出来事と現在も続く領土問題が、両国関係に影を落としている。
上海に展開する日本兵(1937年10月)
Source: ullstein bild/Getty Images現在の火種
領有権を巡る対立は、日中関係において特に大きな火種の一つだ。東シナ海にある島々を日本は尖閣諸島、中国は釣魚島と呼び、双方が領有権を主張している。これらの島々の面積は合わせて約7平方キロメートル。
2012年に日本政府が尖閣諸島の一部を国有化して以降、中国はほぼ毎日のように海警局などの公船を同海域に派遣している。中国船の侵入回数は24年に過去最多を記録した。また、両国は周辺のガス田を巡っても対立している。
中国の軍事力拡大も日本にとって懸念材料だ。ストックホルム国際平和研究所のデータによると、習近平国家主席の就任以降、中国の国防費は2倍に増加。日本の25年版防衛白書では、中国への言及が1000回を超え、「最大の戦略的課題」と位置付けている。
中国の軍拡への対応を一因に、日本も防衛力を拡充している。22年に始まった5年間の防衛力整備計画では、防衛費総額を約43兆円とし、対GDP比は従来の1%超から2%へと引き上げられる予定だ。高市首相はこの2%目標の達成を1年前倒しする方針を示している。一方で中国は、日本が歴史の教訓を学ばず、軍国主義に回帰していると非難している。
尖閣諸島(中国名・釣魚島)
Source: Kyodo News/AP Photo 24年には中国軍機が初めて日本の
領空を侵犯し、中国側も日本の護衛艦が領海に入ったと主張。25年6月には日本が、太平洋上の離島付近で中国の空母2隻と支援艦艇が同時に活動したことを確認したと発表した。
日本の政府当局者らは、中国とロシアの軍事協力拡大、特に日本周辺での共同での海軍・空軍演習に警戒感を強めている。
台湾海峡問題
中国は台湾を自国の領土と見なし、必要であれば武力を行使してでも統一すると公言している。日本は台湾と正式な外交関係を持たないが、現状変更を試みる一方的な行動に反対し、台湾海峡を巡る問題は平和的に解決されるべきだとの立場を取っている。ただ歴代の日本の首相は、台湾有事の具体的なシナリオについては言及を避けてきており、この問題が日中双方にとって極めてデリケートであることを示している。
日本の懸念は地理的な要因に基づく。台湾は日本最西端の与那国島から約100キロメートルの距離にあり、紛争が発生すれば東シナ海全体に容易に波及しかねないことを示している。
日本は近年、台湾有事や地域紛争拡大への懸念を背景に、南西諸島沿いに地対艦ミサイルを配備するなど防衛体制を強化している。一方、中国の軍艦や海警局の船は尖閣諸島(釣魚島)付近への浸入を頻繁に繰り返している。22年には、中国が台湾周辺で数十年ぶりの大規模軍事演習を実施した際、
弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。
日中貿易の現状
1970年後半以降に中国の市場開放が進む中で、
パナソニック・ホールディングスや
トヨタ自動車など日本企業は現地に生産拠点を設け、拡大する中間層向けの販売を進めた。このほか日本企業は、中国を安価な労働力の供給地として活用。「ユニクロ」を展開する
ファーストリテイリングなどが現地に工場を設立、または中国企業から製品を調達して日本や海外で販売した。
現在、日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国にとっても日本は米国に次ぐ重要な貿易相手となっている。だがその関係は急速に変化している。
中国企業は自動車や電子機器といった高付加価値製品の分野で日本企業と直接競合し始めており、日本は完成品よりも中国への部品供給国としての性格を強めている。
オンライン格安通販SHEIN(シーイン)をはじめとする中国の消費者向けブランドは日本市場への進出を加速させている。比亜迪(
BYD)などの電気自動車(EV)メーカーは、中国国内のみならず世界的に日本の自動車メーカーの脅威となっている。
三菱自動車や
日本製鉄など、一部の日本企業は中国事業から撤退、または縮小している。
全体として、日本から中国への投資は減少傾向にある。日本企業にとって中国での事業環境は、政治問題に巻き込まれるなどかねてから予測の難しい状況が続いてきた。さらに改正された反スパイ法など厳格な規制が企業の投資意欲をそぎ、個人も渡航を控える傾向が強まっている。また近年相次いだ日本人の拘束事例も、そうした懸念を一段を深めた。
さらに追い打ちをかけているのが、米国の要請を受けた輸出規制だ。
東京エレクトロンや
ニコンなど日本のハイテク企業は、最先端半導体の製造に必要な装置や化学品の対中輸出を制限する措置の影響を受けている。
対立激化が招くリスク
10月末には、高市首相が習主席と会談し、「
戦略的互恵関係」の推進で一致。だがその進展は現在、崩れかねない状況にある。
高市氏の発言以降、中国政府は日本に留学予定の学生に安全上のリスクを警告し、外務省は国民に日本への渡航を当面控えるよう促した。香港当局も日本向けの渡航注意情報を更新した。
日本にとっての影響は大きい。年間訪日客のうち約4分の1が中国からで、その数は数百万人規模に上る。観光庁のデータによると、直近の四半期では中国人観光客が訪日外国人の中で最も多く消費しており、総消費額は2兆1000億円と全体の約27%を占めた。日本学生支援機構の4月の報告によれば、24年に日本で学ぶ中国人留学生は12万3485人で、全留学生の36.7%を占め、最大の出身国となっている。
今回の対立は、日中両国で事業を展開する企業にも打撃を与えかねない。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、24年末時点で中国や香港での事業拡大を検討している日系企業の割合は過去最低を記録。それでも中国は依然として日本の機械、自動車、化学製品の主要な輸出先だ。また日本は、中国企業が自国内で生産できないハイテク製品の重要な供給元となっている。
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中国は過去にも、政治的対立を理由に経済報復を行う姿勢を見せてきた。12年には、尖閣諸島を巡る緊張が高まった際に、中国で日本製品の不買運動が数カ月にわたって続き、貿易に混乱をもたらした。
原題:
Why Close Trade Partners China, Japan Can’t Get Along: QuickTake(抜粋)
— 取材協力 Jing Li






