商船三井は次期中期経営計画で、配当を維持または増額する累進配当の導入を検討している。業績変動の大きい海運業で配当の安定性を高め、長期投資家の定着を図る狙いがある。
橋本社長
Photographer: Akio Kon/Bloomberg 同社の橋本剛社長はブルームバーグのインタビューで、来期(2027年3月期)から始まる経営計画フェーズ2の期間では「基本的には累進型の配当モデルみたいなものを目指していく」と述べた。詳細は検討中とした上で、当初の年間配当額は今期(26年3月期)に予定する1株当たり200円と同程度の水準になる可能性があると続けた。
商船三井はこれまで、株主還元の一環として配当性向を段階的に引き上げてきたが、収益のボラティリティーが高いため配当水準も大きく変動する課題が浮上していたという。
ブルームバーグの報道後、商船三井の株価は28日午前の取引で上げ幅を拡大し、一時前日比1%高の4433円を付けた。
海運業は世界景気の動向により海上輸送の需要に左右され、業績の振れ幅が大きいことで知られる。商船三井も新型コロナウイルス禍や物流混乱の影響で21、22年度に巨額の利益を計上し大幅増配したが、その後は特需の剥落に伴い利益と配当はともに減少した。
大和総研によると、25年上半期に配当方針を変更した企業は263社と2009年以降で最も多い。目標値引き上げに加え、株主資本配当率(DOE)や累進配当の採用で減益計画でも増配を打ち出す企業が増えている。累進配当は50社超と前年同期の2倍以上に達した。23年に東京証券取引所が要請した「資本コストや株価を意識した経営」を受けて、財務余力のある企業では増配効果のある配当政策への見直しが広がりそうだ。
橋本社長は、業績が好調時には大幅増配し、平常時は配当が半減するような動きは「中長期的な投資家層を形成していく、そういう目的で考えるとちょっと違うのかなと感じている」と指摘。中長期的な会社の成長と安定的な配当に魅力を感じる投資家が定着する配当政策の策定を目指すという。
国内の競合他社では、日本郵船は配当性向40%を目安に配当下限金額を年間200円としている。川崎汽船は適正資本を超える部分についてはキャッシュフローを踏まえて積極的に株主還元を検討するなどとしており、今期配当は120円、配当性向約76%を予想している。
また、経営計画のフェーズ2では「巡航速度を意識したような、安定的な投資にモードを切り替えていく」と説明した。フェーズ1に当たる25年度までの3カ年で積極投資を進め、計画していた投資の一部を「先食い」した側面もあるためだ。6月には欧州と米国で化学品などのタンクターミナルを運営するオランダのLBCタンク・ターミナルズ・グループを買収した。
橋本社長は「数千億円規模のM&Aをやれるかというと、しばらくはそういう大物狙いはお休みして、財務を休ませる必要がある」と話す。ただ、500億-1000億円程度のM&A(合併・買収)の機会については引き続き模索していく方針だ。
また、アンモニアやグリーンメタノールなどの次世代燃料を使用するネットゼロ・エミッション船を35年までに130隻へ拡大する目標については、「少し下方修正せざるを得ないのではないかと思っている」と述べた。燃料の供給体制などを踏まえると達成は難しいと見ている。ただ、50年に温室効果ガス排出を実質ゼロとするネットゼロ目標は維持する方針だ。
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