イングランド銀行(BOE)の量的緩和(QE)は、長期的な視点で考えれば納税者に負担は及ばない可能性は低い。同中銀が新たな分析で見解を示した。QEにより国債発行の利回りが低下し、数百億ポンド相当を節約できているからだという。
ベイリー英中銀総裁はリーブス財務相に宛てた書簡で、納税者の生涯で考えた場合、財務省から英中銀への「純移管額は、QEによる財政的な恩恵で大部分または完全に相殺される公算が大きい」と論じた。
英中銀はQEで2009年から21年にかけ、8950億ポンド(約182兆円)に上る資産を購入した。経済成長を押し上げデフレを回避する目的だったが、結果的に利払い費用を国内総生産(GDP)比で約4%に相当する年1100億ポンド前後にまで膨らませたとして批判を受けている。この利払い費の対GDP比は主要7カ国(G7)で最も高い。
英中銀の政策金利が2%を超えた22年以降、QEのポートフォリオは損失を生み続け、さらに現在進めるバランスシート縮小も状況を悪化させている。政府は09年にQEで英中銀に損失が発生した場合に補てんする合意を結んでおり、QEの損失を埋めるのは最終的に国民の税金だ。
ベイリー英中銀総裁
Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg 22年以降の累計損失額は930億ポンドに達し、金利がゼロ近辺だったQE初期の数年間に得られた1240億ポンドの利益を打ち消しつつある。政党別支持率で首位を走る右派ポピュリスト政党、リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は英中銀に対し、ポートフォリオ縮小の停止を呼び掛けている。
英中銀は標準シナリオとして、QEの長期的な収支は900億-1600億ポンドの純損失になると予想。ただ、同中銀の新たな分析によると、QEにより「有利な条件で政府の資金調達が可能になった」点を踏まえると、この損失は実質的にゼロになる。
QEで政府は超長期の資金を低利で借り入れることができ、その結果として「現在の価値で」500億-1250億ポンドの追加的な利払い削減効果が発生。これは標準シナリオで想定されている「正味現在価値」のポートフォリオ損失にほぼ一致するという。
英国は先進国の中で、最も長期の債務償還構造を持つ国の一つ。これにより市場の短期的な金利変動に左右されず、低金利を長期間固定できる。ただ、英中銀がQEを通じて保有する国債の多くは損失が発生している。発行済みの国債の大部分は民間投資家が保有している。
損失が出ている理由は、英中銀が購入した国債の平均クーポン(2%強)と、国債購入のために創出した準備金に同中銀が支払う金利との差額だ。この準備金は民間銀行が保有し、英中銀は現在4%の金利を支払っている。
原題:
QE Will Cost UK Taxpayers Nothing in the Long Term, Bailey Says(抜粋)





