米
テスラの株価は昨年10月の決算発表以来、ほぼ2倍に上昇している。こうした動きは通常、今後の業績に大きな期待が寄せられていることを意味する。ただ、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の政治的な注目度の高さに比べると、同社の自動車販売事業は脇役になりつつある。
同社の巨大な市場価値の大部分は、完全自動運転車の開発と販売を他社に先駆けて行うとの期待に支えられている。昨年11月の選挙でドナルド・トランプ氏が当選して以降、その期待はさらに加速した。投資家はマスク氏とトランプ氏の親密な関係が有利に働くと見込み、新政権下で電気自動車(EV)優遇措置が廃止される可能性がキャッシュフローに与えるリスクを無視した。
テスラが利益を上げつつ自動車を製造し販売する能力は、もはや重要ではないようだ。オプション市場の取引状況からは、29日に発表されるテスラの2024年10ー12月期(第4四半期)決算発表を受け、投資家は上下いずれの方向にも7%の値動きを想定していることがわかる。決算発表後の株価変動幅としては2022年10月以来の小幅が見込まれている。
アプタス・キャピタル・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、デービッド・ワグナー氏は「市場はテスラの業績など関係ないかのように動いており、大きなショックが起きた場合には、投資家が不意を突かれる可能性がある」と警告する。
テスラ株(右軸)、テスラ四半期決算の1株利益予想平均(左軸)
出所:ブルームバーグ利点とリスク
テスラ株は今や、投資家が同社というよりむしろマスク氏本人にに期待をかける手段となっている。利点である一方、リスクもはらんでいる。
イーロン・マスク氏
Photographer: Omar Marques/Getty Images 同株は今や、成長や収益性といったありきたりなものには縛られていない。1月、テスラが発表した10ー12月期の納入台数は市場予測を下回り、年間販売台数も約10年ぶりに
減少した。だがS&P500指数銘柄としては特に割高な水準にあるテスラの株価は、一時下落した後すぐに回復した。
裏を返せばテスラは今、不安定になりかねないトランプ、マスク両氏の関係の紆余曲折に対してはもろいということだ。 マスク氏は先週、トランプ氏が発表したAIインフラへの巨額投資計画「スターゲート」について、参加した企業が十分な資金を持っているか、公然と
疑問を呈した。またトランプ氏と共和党はEVには原則反対の立場で、同氏は関連する補助金や政策の廃止を検討するよう政権に命じている。
バークレイズのアナリスト、ダン・レビー氏はテスラが米国で販売する約3分の2、つまり世界販売の20%が、EV税額控除の恩恵を受けているとみている。トランプ政権下で他の関連補助金や奨励金が今後どうなるか、まだ明らかになっていない。
テスラの完全自動運転車「サイバーキャブ」の試作品
Photographer: David Paul Morris/Bloomberg将来の可能性
AIやロボタクシー(無人タクシー)といった将来の可能性に法外な評価額が付けられている懸念は、27日の市場で鮮明になった。中国のAIスタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)が低コストのAIモデルを発表したことで、既存大手のビジネスモデルが
破壊されかねないとして、米国の大型テック株は急落した。
エバコアISIのアナリスト、クリス・マクナリー氏によると、テスラの時価総額のうち現在5000億-6000億ドル(約77兆7300億-93兆2800億円)はEVとエネルギー事業に基づくもので、残りは自動運転車とヒューマノイドロボットへの取り組みに依存している。データトレック・リサーチの共同創業者、ニコラス・コラス氏の計算によると、テスラ株価の90%以上が将来の可能性に結びついている。
それでもテスラの中核事業は本質的に、今回のディープシークのような突然の衝撃から同社を守る可能性があるという見方もある。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「どんな企業でも混乱に直面する可能性はある。ただ、自動車製造業はコンピューターのソフトウェアやハードウェアよりもはるかに長いサイクルで展開されているため、テスラの脆弱(ぜいじゃく)性はもう少しゆっくりと現れることになるだろう」と述べた。
原題:
Tesla’s $600 Billion Run-up Looks Past Major Risks to EV Growth(抜粋)








