ブルックフィールド・プロパティーズがドバイで手がけるの新たな高級不動産プロジェクトでは、本格的な建設がまだ始まっていないにもかかわらず、既に購入希望者による入札合戦が繰り広げられている。
世界各地の超富裕層が、このウォーターフロント開発プロジェクト「ソラヤ(Solaya)」のマンション購入を巡って競い合い、ペントハウスの参考価格は2400万ドル(約37億円)超に達している。
ブルームバーグ・ニュースが確認した販促資料によると、入札に参加できるのは、超富裕層の住宅購入希望者に限られ、関心を表明するためには100万ディルハム(約4200万円)の小切手を提出して資金力を証明しなければならない。割り当てを受けられなかった場合、小切手は返却されるという。
プロジェクトを手掛けるブルックフィールドとドバイ・ホールディングが運営する入札は、世界で最も熱い不動産市場の一つであるドバイの内情を垣間見る貴重な事例となっている。
ソラヤ開発プロジェクトの室内完成予想図
Source: Brookfield Properties and Dubai Holding 不動産コンサルタント会社ナイト・フランクの推計によると、直近の数四半期では、ドバイでの高級住宅販売件数がニューヨークやロンドンを上回り、世界の都市の中で最も多かった。
購入熱の高まりは、2009年より前に見られたドバイ不動産ブームを想起させる。当時も完成前の物件を売買するいわゆるオフプラン市場での取引が活発だったが、同市場の価格が急落しブームは崩壊した。
そのオフプラン市場が再びドバイ不動産ブームを支える柱となっている。世界の購入者がセカンドハウスを求めて集まり、オフプラン取引はドバイ不動産の全取引の約70%を占める。
海外投資家からの大規模な資金流入が続いているため、市場の調整が起きれば影響は世界に波及しかねない。
09年のバブル崩壊前には多数の購入者が転売益を狙って複数の住宅を購入したが、世界的な信用危機の中で多くがローンの返済不能に陥った。開発業者は数百件の未完プロジェクトを抱え、工事を続ける資金が断ち切られた。
その余波で数千人の外国人居住者がドバイを離れ、高級車を空港に放置して逃げ出す光景も見られた。
ドバイ政府は近年、購入者保護のための措置を導入した。ナイト・フランクによると、1000万ドル超の高級住宅の価格は19年以降に145%上昇し警戒感も出始めているが、世界の投資家はドバイが導入した購入者保護策に期待を寄せている。
現在、開発業者は土地代金を前払いする必要がある。購入者が支払った資金は第三者が管理するエスクロー口座に預けられ、建設の進捗(しんちょく)に応じて段階的に引き出される仕組みになっている。
また、ブローカーや開発業者によると、09年当時と異なり、現在の需要は短期転売を狙う投資家ではなく、実需層や別荘需要が中心となっており、市場の安定性はより高いとみられる。
世界金融危機後に頓挫したプロジェクト「ドバイ・パール」の解体作業現場(2023年)
Photographer: Andrea DiCenzo/The Washington Post/Getty Images それでもリスクは残る。世界的な景気後退や地域情勢の悪化などをきっかけに市場が急落すれば、一部の開発業者がプロジェクトを完遂できずに購入者が損失を被る恐れがある。原油価格が大幅に下落して、依然として原油に依存する地域の市場心理を冷やすリスクもある。
UBSグループのアナリストは最近のリポートで「22年以降、経済ブームの中でドバイのバブルリスクが急上昇し、市場はますます過熱しているように見える」と警鐘を鳴らした。
もっともUBSによると、ドバイのリスク水準はマイアミ、東京、チューリヒを含む「高」リスクカテゴリーにはまだ達していない。
同社によれば、ドバイ市場には2つの下支え要因がある。賃貸利回りが依然として高水準にあることと、住宅価格が他の主要都市に比べてなお大幅に低いことだ。
最近の値上がりにもかかわらず、ドバイ不動産に割安感があるのは、これまで数年間にわたる下落の積み重ねによるものだ。ナイト・フランクによると、平方フィート当たりの価格はニューヨークやロンドンの約3分の1にとどまっている。
今回のドバイ不動産ブームは、20年に同国が新型コロナウイルス対応で注目を集め、居住制度を緩和したことをきっかけに始まった。
これを受けてバンカーやヘッジファンドのトレーダーが相次いで移住したほか、ウクライナ侵攻後に流入した裕福なロシア人や、英国での増税を避けようとする購入者もブームを後押しした。
不動産コンサルタント会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・コアの調査責任者プラチューシャ・グラプ氏は、多くの購入者がオフプラン市場に殺到するのは、分割払いで市場に参入でき、必ずしも頭金20%を用意する必要がないという手軽さが理由の一つだと説明。「供給は増えているものの、その背後には強力な需要要因が存在している」と述べた。
高級物件開発会社オムニヤットの「ルメナ・アルタ(Lumena Alta)」プロジェクトの完成予想図
Source: Omniyat
ドバイは贅(ぜい)を尽くした生活を志向する人々に合わせて進化してきた都市だ。ソラヤには、ビーチフロントの住宅234戸を擁する超高級ビル9棟が建設される予定。各ペントハウスには専用ロビー、専用エレベーター、大型テラス、そして水面が空や海と一体化して見えるインフィニティープールが備えられる。
ラ・キャピタル・リアルエステートのブローカー、アジェイ・シン氏ら仲介業者によれば、購入者は通常、建設期間中に物件価格の60%分を支払い、残りを引き渡し時に支払うという。ブルックフィールドとドバイ・ホールディングはコメントを控えた。
オフプラン販売は、2010年代前半にロンドンで起きた高級マンションブームでも一般的な手法だった。だが、建設完了前に手付金を支払った一部の投資家は、価格下落に伴う転売により損失を被る結果となった。その後、この現象はロンドンでは後退した。
ドバイで進行中のソラヤ開発プロジェクトの完成予想図
Source: Brookfield Properties and Dubai Holding
ドバイの開発業者は、過去から教訓を学んだようだ。多くの企業が市場の変動時でも建設を完遂できるよう、自らの財務基盤を強化しようとしている。
例えば、ドバイを本拠とする超高級住宅開発会社オムニヤットは今年、9億ドルのイスラム債を発行し、1億ドル規模のプライベートクレジット枠を確保した。同社を含むドバイの開発業者は、市場減速が起きた場合でも軟着陸できることを目指している。
原題:
Dubai’s Unbuilt Penthouses Spark Bidding Spree Among Ultra Rich(抜粋)
— 取材協力 Damian Shepherd, Emma Dong and Jack Sidders





