プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が保有企業を売却する際に債務条件を修正することにより、銀行はバイアウト案件で利益率の高い引受手数料を逃すリスクに直面している。
ポータビリティー条項は企業の古い債務を固定し、企業が売却された時に買い手が直ちに借り換えや返済を迫られることを回避する。
これは、厳しいM&A(企業の合併・買収)市場での取引成立に意を砕いているプライベートエクイティー投資企業にとっては良いことだ。しかし、ここ数年の低迷からようやく抜け出し新たなバイアウト案件への融資に期待を寄せている銀行にとっては悪いニュースだ。
欧州のレバレッジドファイナンス市場で最近成立した大型案件のうち、製薬会社
シュターダ・アルツナイミッテルと公共料金の検針サービスなどを手がけるテヘムの買収案件では、ポータビリティー条項により、買収される両社への融資総額が予想されていた90億ユーロ(約1兆3500億円)を大幅に下回る可能性があり、その結果貸し手となる銀行の手数料収入も大幅に減少する可能性がある。
債務パッケージにおいてポータビリティーはより一般的になってきているが、「異例なのは、企業が売却される過程で借り換えをしてポータビリティーを導入しようとしていることだ」と、シティグループのローンおよびレバレッジドファイナンス担当マネジングディレクター、ジュリア・フランク氏は述べた。
プライベートエクイティー投資会社は、プライベートクレジットが多くの案件を占めていた時代に、ポータブルローンに慣れた。買収資金の大半を銀行から調達するようになった現在も、ポータビリティーの特典を維持したいと考えている。
ポータビリティーの利点の一つは、取引が不成立となった場合、プライベートエクイティー投資会社に一定の保護が与えられることだ。「ポータビリティーを導入することで、売却プロセスが実現しなかった場合でも、企業は満期の問題に直面せずに済む」とシティのフランク氏は述べた。
投資銀行はバイアウトの資金調達全体を支援したいと考えているが、債務のポータビリティー条項を含む案件では、より少額の融資になることを受け入れざるを得ない状況にある。
テヘムの場合、買い手であるプライベートエクイティー投資会社のTPGとシンガポールの政府系ファンドGICは、テヘムの18億5000万ユーロの債務を取引完了後に借り換えなくて済むようにポータビリティーを求めている。
また、事情に詳しい関係者が匿名を条件に述べたところによると、ベイン・キャピタルとシンベンは売却しようとしているシュターダの債務を12億5000万ユーロのジャンク債でリファイナンスした際にポータビリティー条項を組み込んだ。
原題:
Private-Equity Firms’ Exit Tactics Risk Curbing Fees for Banks(抜粋)






