トランプ米大統領は、米国が中東の戦争に巻き込まれる事態を避ける方針をかねてから掲げてきた。だが、イスラエルによるイランへの攻撃に加わることで、地政学的に劇的な方向転換に踏み切った。中東の戦争への米国の関与が長期化するかどうかなどが今後の焦点となる。
何日もの協議と、相反する
メッセージの発信を重ねてきたトランプ氏は21日、イランの核施設3カ所への
攻撃を実行したと発表。イラン核開発計画の破壊を目指すイスラエルの取り組みを後押しし、米国を激化する地域紛争に引きずり込んだ。数日前には、イランとの核合意を探るため最大2週間の猶予を与える意向を示したばかりだった。
2期目就任以来、中東を巡るトランプ氏の関心は、軍事力拡大よりもむしろ米国の投資を呼び込むディールに向けられてきた。5月の中東歴訪では、この地域の未来は、「混乱ではなく商業によって」築かれるべきだと話していた。
だが、今回の攻撃により、トランプ政権の関税政策で既に混乱していた世界経済にさらなる不安要因が加わることとなった。世界の原油供給の約5分の1は、イランと湾岸アラブ諸国の間に位置するホルムズ海峡を経由している。
世界の原油トレーダーは神経をとがらせている。ホルムズ海峡が封鎖されるという極端なシナリオでは、原油価格は1バレル=130ドルを超える可能性があり、世界経済成長の重しとなり、消費者物価の上昇を招くとブルームバーグ・エコノミクス(BE)は分析している。
イラン核施設への攻撃を発表するトランプ米大統領
Source: Bloomberg 攻撃に至る数日前、トランプ氏と側近らはいかなる行動も限定的なものにとどまると示唆していた。ところがトランプ氏は17日、中東紛争への対応に当たるため、カナダでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)を急きょ
切り上げ、帰国。政権が軍事行動の可能性によりオープンになった兆しが示された。
ウィトコフ中東担当特使率いる米代表団は数カ月にわたってイランの核開発プログラムを巡り交渉を行ってきたが、進展は乏しく、イスラエルはイランに対し先制攻撃を実施。トランプ氏はイランを攻撃するか2週間以内に決定を下すとし、交渉再開の可能性を残していた。
しかし20日までには、英仏独3カ国とイランとの協議が突破口を開けなかったとして交渉に見切りをつけ、イランに対する忍耐はほぼ尽きたと述べた。
イランのアラグチ外相
Source: www.lundi13.ch 今後の焦点は、イランがどう反応するか、そして戦争への米国の関与が長期化し得るかどうかだ。一部の議員からは、トランプ氏が議会の承認なしに独断で対イラン戦争を遂行する権限について疑問視する声が上がっている。
今回の対イラン攻撃を巡っては、ホワイトハウス内外のトランプ支持者の間でも意見が割れている。外交政策のタカ派は、強い姿勢を示しイランの核兵器保有を阻止する好機だとして攻撃を支持。一方、孤立主義者は、戦争よりも移民問題など国内の課題に集中すべきと主張している。
トランプの長年の盟友、スティーブ・バノン氏は21日夜、自身のポッドキャストで、トランプ氏は説明責任を果たさなければならないが、最終的に同氏の支持層はついてくるだろうとの見方を示した。
「MAGA(米国を再び偉大に)」を支持する層の多くは今回の件に満足していない。トランプ氏は正確に説明しなければならないが、最終的にそうした層を全て取り込むと私は確信している」と語った。
関連記事
イラン核施設、「完全破壊」は確認できず一監視の目が届かない恐れも
イランは単独でトランプ氏やイスラエルに対抗-同盟国の支援望めず
トランプ氏、イランの体制転換に言及-イスラエル首相は攻撃継続明言
原題:
Trump Makes Dramatic About-Face With Plunge Into Middle East War(抜粋)







