イングランド銀(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は23日、量的緩和(QE)プログラムによって生じた債券の保有残高を、より迅速に圧縮すべきだとの考えを示した。スイス・ジュネーブで開かれたピクテ・リサーチ・インスティテュートのシンポジウムで語った。
イングランド銀が今後1年間の量的引き締め(QT)のペースを、1000億ポンド(約19兆9600億円)から700億ポンドへ減速すると決めた18日の金融政策委員会(MPC)で、ピル氏は反対票を投じた。ピル氏はMPCの中で唯一、年間1000億ポンドの圧縮ペース維持を主張した。このペースは、国債の積極的な売却のさらなる加速を意味する。
ピル氏は、「QEポートフォリオを少しでも早く縮小する必要性を重視している。他の委員ほどは、市場機能も脆弱ではないと考えている」と述べた。仮に市場に混乱が生じても、それを下支えする手段は中銀が保有しているとした。
イングランド銀はこれまで、QEで8950億ポンドに積み上がった保有債券を、満期償還分の再投資をしないことに加え、積極的な売却によって縮小してきた。だが、特に長期国債市場の一部でストレスの兆しが見られると懸念し、MPCは18日、10月からのQTのペース減速を決めた。
QEポートフォリオと政府の財政政策の相互作用は、2022年以降の金利上昇を受けた損失の増加により、近年の予算編成を複雑にしている。ピル氏はこの点について「財務相が採用した財政ルールの設計に起因する問題で、中央銀行の責任ではない」と強調した。また、「QEに伴う資金フローの規模に対応できる、よく設計された財政ルールが必要だ」と述べた。
イングランド銀と英予算責任局(OBR)によると、QEポートフォリオは政策金利が2%を超えて以降、930億ポンドの損失を出しており、2009年以降に積み上げた1240億ポンドの利益の大半が相殺されている。今後も含めると、最終的に納税者が被る損失は1000億ポンドを超える可能性がある。昨年だけでも、借り入れコストが180億ポンド増加し、国の財政余地を圧迫している。
ただ、ピル氏は「損失が出たからといって、それが悪い政策だったということにはならない。むしろ、金融危機後やパンデミック時に英国経済の安定を取り戻す上で極めて重要だったと言える」とも述べた。その上で、QEは効果を発揮したものの「それでも中銀と財務省の間で生じたこうした複雑な関係は、今後の運営にとって課題となる」と語った。
原題:
BOE’s Pill Says It Has Tools to Run Down QE Bonds More Quickly(抜粋)





