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銀行のリスク移転商品に資金殺到-ウォール街の錬金術、落とし穴も

記事を要約すると以下のとおり。

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米連邦準備制度理事会(FRB)本部の対岸にあるバージニア州アーリントンのオフィスで、EJFキャピタル創業者のニール・ウィルソン氏は、規制当局によって同社のような投資会社に生み出される機会について熱っぽく語る。
  バランスシート強化を求める米規制当局のキャンペーンを背景に、銀行は帳簿上のリスクを軽減する創造的な方法を探っている。 その結果、ウォール街の錬金術とも言えるリスク移転、いわゆる「SRT」に注目する銀行は増えるばかりだ。
  リスク移転は自動車や商業用不動産、事業などを担保としたローンで生じた損失の初期をウィルソン氏のような投資家に転嫁する。ローンのパフォーマンスが良好であれば、投資家はかなりの利益を得ることができる。
  ウィルソン氏はこの考え方が米国中の銀行経営者の間で今年、「急速に広がり始めている」として、「加速の局面だ」と話す。

  実際、JPモルガン・チェースから米国の中規模金融機関に至るまで、SRT取引のニュースは相次いでおり、業界の次の大きなトレンドとなりつつある。昨年の地方銀行での預金流出や商業用不動産市場の亀裂発生によって、バランスシートは強ければ強いほど良いと銀行経営者が認識した結果でもある。
緩衝弁
  米規制当局がバーゼル最終合意として知られる資本規制強化案を発表したこともSRT取引を勢いづかせた。規制強化により、大手銀行は損失に対するバッファーを強化せざるを得なくなる可能性があるからだ。
  しかし、恐らく最も重要なのは、資本算出においてSRTを認識する方向でFRBが新たな意欲を昨年示したことだ。さまざまな圧力に対する緩衝弁としてSRTが利用できることになる。
  SRTの投資家にとって、これはチャンスだ。資産総額1000億ドル(約15兆5000億円)未満の銀行約2800行が今後数年間で、2000億ドルのローンに関するリスクを軽減するための取引を行う可能性があると、ウィルソン氏は予測している。

  同氏は今年、米南東部の大型住宅ローンに関連するSRT債を購入している。これは、大手銀行がすでに積み上げている取引に加わるものだ。ほんの数年前までは、米国にはこのような市場はほとんど存在しなかった。
  SRT、つまり「重大なリスク移転(Significant Risk Transfer」という名称は、市場で好まれる包括的な用語であり、類似した構造を持つ多様な取引を指す。時には「合成(Syinthetic)」または「信用(Credit)」リスク移転とも呼ばれる。
  典型的なSRTでは、銀行がバランスシート上にある貸付債権のプールから生じ得る損失の最初の5-15%分についてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を購入する。
  損失が発生した場合はCDSの売り手がその損失を負担する。欧州などではこのような取引が数年前から行われており、投資家は通常、2桁台前半の堅実なリターンを得ている。

How SRTs Usually Work

  このような案件に投資するオルタナティブ資産運用会社であるコーラス・キャピタル・マネジメント(ロンドン)がまとめたデータによると、SRTの世界での発行額は今年1-9月に記録的なペースで166億ドルに膨れ上がり、年末までに280億-300億ドルに達する可能性もある。 
  欧州の銀行が長らく発行額の大半を占めてきたが、今後数カ月から数年で米国の銀行が案件を大幅に増やすことが広く予想されている。

ニール・ウィルソン氏
Photographer: Kyle Grillot/Bloomberg  ウィルソン氏の表現を借りれば「欧州のイノベーションがようやく米国にやって来た」ということだ。
  しかし、SRT投資のベテランや規制当局者は、市場の成長には痛みを伴う可能性を懸念している。

  現在、投資家の需要が供給をはるかに上回っているが、その原因の一つは、待ち望まれている米SRT市場の拡大が何度もつまずいたことにある。
FRBのガイド
  米国での投資家の関心は、5年前にJPモルガンが新しいタイプの住宅ローン関連のリスク移転商品を設計した時に高まった。このコンセプトは業界で注目を集めたが、資本強化策の一環として米国の規制当局の承認を得るには何年もかかった。
  そして昨年、規制当局がバーゼル最終案の策定に着手したことを受け、FRBは一見したところ当たり障りのない「よくある質問」を公表し、どのようなSRT構造が適格となり、どのような利益をもたらすかを概説した。
  銀行の取締役会では議論が巻き起こった。投資家はSRTを購入する資金を積み上げ始めた。
  だが、FRBの簡潔なガイドには問題があった。一つ一つの取引にFRBの承認を得る必要があるという点だ。このプロセスには1年近くかかる可能性があるため、不満の声が上がった。
  また、規制当局がバーゼル最終案の厳格なバージョンを提案した後に資本要件引き上げ幅を大きく縮小させたため、一部の銀行はSRTについてブレーキを踏み、今後の展開を見守ることにした。
関連記事:
FRB、大手米銀の資本要件引き上げを半減へ-計画案を大幅変更
  5日の大統領選はドナルド・トランプ氏が勝利。同氏が過去に大統領として行った規制緩和の実績を考慮すると、
不確実性はさらに高まるかもしれない。

  結果的に、意欲的な投資家の需要を満たすには案件が少な過ぎるという状況が生まれた。参加者の多くがSRTに不慣れなため、買い手が緩い条件を受け入れた案件でこの新たな市場がすぐに汚染されてしまうのではないかという懸念が生じている。
  ベテラン投資家は例えば、質が低めのローンの組み込れを銀行に可能にさせる条項など、細則を厳しく検証することが重要だと指摘する。

Risk Transfers Are Taking Off in US After Their Rise Abroad
Banks across Europe and other regions have done such deals for years

Source: Bloomberg
Note: Figures show only synthetic risk transfers, converted from the deals' original currencies into US dollars at annual average exchange rates. Total figure excludes some SRT deals in which data could not be obtained.

  現在、SRTの専門家が周囲を見渡せば、専門知識がバラバラの「通りがかり」の投資家が目に入る。
  例えば、ローン担保証券(CLO)の買い手だ。CLOの投資家は以前からSRTへのエクスポージャーがあったが、企業の合併・買収(M&A)が昨年低迷し、魅力的なリターンを生むCLO商品が不足したため、一部の投資家はSRT市場により深く足を踏み入れた。
  さらに、資産運用会社の顧客がそれまでSRTに興味を持っていなかった運用会社に投資を促している。
あふれる資金
  買い手が増えればスプレッドが縮小し、投資家が負うリスクに対する報酬が縮小する。市場関係者によると、新規SRTの価格は、ベンチマークに対するスプレッドが1年前と比べて少なくとも2ポイント縮小している。
  8月にはモルガン・スタンレーがプライベート・マーケット・ファンド向け40億ドル強相当の貸付債権ポートフォリオに関するSRTを販売。事情に詳しい関係者によれば、ベンチマークに対する上乗せ幅は4ポイント未満で、同様の案件でスプレッドがもっと広かった数カ月前と対照的だった。
  銀行は、SRTに飢えている投資家が多数いることをよく理解している。欧州で古くからSRT商品を発行しているドイツ銀行では、大型企業取引をシンジケート化する商品で見込まれる買い手リストがすぐに数十社に膨れ上がる可能性があると、事情に詳しい関係者が述べた。 
  事情に詳しい関係者によると、「不良債権」化していることが広く知られている債権を組み込もうとした発行体もあるという。ベテランはそうした債権を素早く排除するが、それほど周到でない投資家もいるかもしれない。

  「過去10年と比較すると、現在はSRTを求める資金があふれている。これは価格設定がより効率的になることを意味するが、同時に銀行がより創造的になれることも意味する」と、10年以上にわたってSRTを購入している
ダイアミター・キャピタル・パートナーズの共同創業者ジョナサン・ルインソーン氏は述べた。
  JPモルガンとモルガン・スタンレー、ドイツ銀の広報担当者はコメントを控えた。
  理想的なのは、売り手と買い手が、資産プールにどのローンを含めるかについて、特に企業債務や商業用不動産ポートフォリオについて、意見を交わすことだ。そうすることで、経済情勢が変化しても、債務が返済されるまで、何度も更新可能な取引を成立させることができる。
負のループ
  しかし、多数の新規投資家の参入で、SRTに対して「量的アプローチ」を採用し、何が組み込まれているか不透明な商品を購入する投資家が増えていると、ダイアミターの共同創業者スコット・グッドウィン氏は説明。
  ダイアミターはそうしたことを望まず、SRT対象のポートフォリオの質に細心の注意を払っていると同氏は述べた。
  統計や確率に頼る新規参入者は、後に気まぐれな投資家となり、市場環境が変化した時に再投資を拒む可能性がある。そのような場合、貸し倒れリスクが銀行に戻り、バランスシートを損なう可能性がある。
  もう一つの懸念はレバレッジだ。借り入れはSRT市場では確立された手法だが、リターンを高めるためにレバレッジが利用されるケースがさらに増えていると専門家は言う。ある運用担当者は、十数行の銀行から融資を受けていると明かした。
  国際通貨基金(IMF)は10月の報告書で、ストレスが高まった時に「
負のフィードバックループ」が生じる可能性について警告を発した。

  銀行の債権ポートフォリオを保証しているSRTの買い手が、銀行からの借り入れでレバレッジを働かせている場合、貸し倒れリスクは実際には銀行システムから出て行ってはいないことになる。

Potential Benefits of SRTs:

Source: Bloomberg

スコット・グッドウィン氏
Photographer: Lionel Ng/Bloomberg  それでも、グッドウィン氏のようなSRTファンは、この金融商品が正しい方向への一歩だと確信している。
  2008年の金融危機後に弱体化した銀行は、希薄化につながる増資を避けるためにSRT取引を採用した。政策当局もこれを支持した。銀行の新規融資余力が高まることは、金利を妥当な水準に維持するのに役立った。
  「SRTは銀行と投資家双方に利益をもたらす。銀行はより多くの資本で、バランスシートを拡大することができる」と同氏は語った。投資家は質が高い資産プールから魅力的なリターンを受け取り、銀行は引き続きリスクを負うことで、両者の利害関係が一致するというわけだ。
  問題は、SRT市場が今後どのように発展していくかだ。リスク移転を前提に融資するというモデルはEJFのウィルソン氏を不安にさせるだろう。
  しかし、現在行われている取引はSRT投資家にとって有益だと考える同氏は、ローンが返済されるまで責任を負っているのは銀行だと指摘している。

投資家がリスク資産への投資を求め、銀行はホットな市場に参入
Source: Bloomberg原題:
‘Flood of Money’ Chases US Banks’ Hot New Trade Despite Risks(抜粋)
 

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[紹介元] ブルームバーグ マーケットニュース 銀行のリスク移転商品に資金殺到-ウォール街の錬金術、落とし穴も

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