モルガン・スタンレー・アジアの元会長スティーブン・ローチ氏は、自身がかつて発した香港は終わったとの宣言を撤回。米中対立が一段と激化する中、香港はむしろ活力を取り戻しているとの見方に転じた。
ローチ氏は2024年2月の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿で、「香港は終わった」と記していたが、当時予想していなかった米中対立が香港にプラスになっているとの見方を示した。
ローチ氏(79)は米コネティカット州の自宅で、 「ショッキングなことに、変わったのは、米中の対立が悪化した点だ」と語った。24年当時には「香港が米中の間で板挟みになると予想していたが、現実には中国の国際金融における最重要の窓口という香港の独自性が生きる格好となっている」と分析した。
技術覇権をめぐる米中の争いの中で中国企業が資金調達を急ぎ、2025年に入って香港市場に大量の資金流入が起きている。香港株の指標のハンセン指数は年初来で16%上昇し、ほぼ横ばいの米S&P500種株価指数のパフォーマンスを大きく上回っている。新規株式公開(IPO)による資金調達額も5月末までで770億香港ドル(約1兆4000億円)と、2021年以来の高水準を記録した。
スティーブン・ローチ氏(香港で、2024年)
Photographer: Lam Yik/Bloomberg ローチ氏は昨年まで維持していた香港衰退説の理由として、中国経済の減速が香港に波及するリスク、米中対立の板挟みになるとの見方、香港国家安全法の導入による政治的自由の喪失を挙げていた。
これらのうち2点はいまも懸念材料として残るものの、香港は「今や経済・行政・法制度面で中国の完全な支配下にある」とローチ氏は指摘。中国とのつながりの強さと同時に独自の法的システムと通貨を持つ香港が、米中の覇権争いの中で新たな存在意義を得ていると分析した。
「中国経済、米中対立、国内政治という3つの要素があるが、そのうちの一つが変わった。つまり米中対立が、脅威というより機会になってきている」と、エール大学法科大学院ポール・ツァイ中国センターの上級研究員であるローチ氏は語った。
同氏は、香港の「金融的成功はむしろ中国との結びつきに左右されるだろう」と述べ、「米国からの圧力が米中の金融面でのデカップリング(切り離し)を加速させ、それによって香港が恩恵を受ける」との見解を示した。
「以前書いた記事を今書き直すとしたら、香港は中国的特徴によって復活しつつあるというものになるだろう」と語った。
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原題:
Stephen Roach Now Says It’s Too Early to Declare Hong Kong Over(抜粋)





