パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言で来月の利下げ開始が明白になった後、債券トレーダーは初回の利下げ幅とそれ以降の金融緩和の道筋に注目している。
パウエル氏は23日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで講演し、「政策を調整する時が来た」と述べた。投資家が待ち望んでいた利下げが間近に迫っていることを示す、これまでで最も明確なシグナルとなった。
パウエル氏は利下げ幅や緩和の道筋については示唆を与えなかったものの、インフレ鈍化の進展がみられるとしたほか、政策当局者は政策を方向付けるものとして労働市場の健全性に注目すると述べた。投資家は議長のコメントをリスクテークのゴーサインと受け止め、23日に米国債利回りとドルは下落。米国株は上昇した。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「市場は今回のスピーチを吟味し、市場と米金融当局がなおデータに依存していることを思い出す必要がある」とし、パウエル氏はハト派的なトーンを打ち出したものの、「今こそデータの裏付けが必要だ」と指摘した。
しかし、この後に中東情勢が不安定化。レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは25日、司令官が先月殺害された報復として、イスラエルへの第1段階の攻撃を実施。イスラエルは今回の攻撃を察知したとして、レバノン南部のヒズボラ拠点に先制攻撃を行った。
イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点攻撃-ヒズボラ側も報復開始
中東情勢の緊迫化により週明けのアジア市場では、特に米国債やドルといった安全資産の需要に関するトレーダーの戦略が混乱する可能性がある。
Traders Price in Quarter-Point US Interest-Rate Cut Next Month
In all, traders bet on about 1 percentage point of Fed easing in 2024
Source: Bloomberg
23日には、利下げに対する次の大きな賭けがすでに焦点になりつつあった。トレーダーは9月の0.5%利下げを見込む取引を増やした。そしてキャリートレードの新たな波の調達通貨としてドルが浮上した。
パウエル氏の講演後に全年限で米国債利回りが低下。10年債利回りは3.8%で終了し、週間の下落幅は8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)となった。ブルームバーグ指数によると、今月に入って22日までにプラス1.44%となっていた米国債リターンはさらに拡大した。
米国債は4カ月連続のプラスとなる見通しであり、これはここ3年で最長。米利下げ見通しが追い風になり、S&P500種株価指数は今年に入って18%上昇。ブルームバーグ・ドル指数は6月下旬以降、4%余り下げている。
中東の地政学リスクの高まりが長引けば最高の安全資産である米国債の需要も高まるが、一方でS&P500種を圧迫し、ドルを押し上げる可能性がある。
次回の米雇用統計が非常に重要
パウエル氏はジャクソンホール会合で「方向性は明確」だとしたものの、「利下げのタイミングとペースは今後入手するデータ、変動する見通し、そしてリスクバランスに左右される」と説明した。
BNYメロンの外国為替・マクロストラテジスト、ジョン・ベリス氏はパウエル氏のコメントを考慮すると9月の利下げ幅が「25bpと50bpのどちらになるかについてはなお議論の余地がある」と指摘した。
パウエル氏の発言を受け、9月6日に発表される8月の米雇用統計の重要性が非常に高まっている。
7月の雇用統計は予想を下回ったが、8月の統計も同様な内容だった場合、「50bpが視野に入ってくる可能性がある」とベリス氏は述べた。
金利スワップ市場の動向は今年に入って、計約1ポイントの米利下げを示唆している。連邦公開市場委員会(FOMC)会合は年内あと3回開催されることから、トレーダーが1回の大幅利下げを見込んでいることを示す。
雇用統計の発表に先立ち、8月30日にはFRBが重視する7月の個人消費支出(PCE)価格指数が公表される。総合とコア共に伸びが6月を若干上回ると予測されている。
金利の道筋にかかわらず、利下げへの転換はドルにとってマイナス要因とみられており、キャリートレードの調達通貨としての魅力が高まる可能性がある。ただ、キャリートレードが利益を生むためには特に調達通貨の低ボラティリティーが必要になるが、中東での戦闘が激化すればその可能性は後退する。
ヘッジファンドのブルーエッジ・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、カルビン・ヤオ氏は23日、パウエル氏の講演を受け、「アジアや他の新興市場国はこの動きをドルのおごりによる無料のバーと見なす可能性が高い」とし、「1パイントのキャリーかリスクのカクテルを手に入れて、明日の心配はしらふの人に任せようといった感じだ」と語った。
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原題:
Powell’s Pivot Leaves Traders Debating Size, Path of Rate Cuts(抜粋)







