大豆取引が米国と中国の貿易戦争で対立点の一つとなっている。世界最大の大豆輸入国である中国は、新たな収穫シーズンに入っても米国からの出荷分について一切契約していない。
これは異例の事態であり、中国への輸出に大きく依存している米国の生産者にとって大きな打撃となる。中国は代わりにブラジルやアルゼンチンなど南米の生産国からの輸入に軸足を移しており、米国の農家は大量の在庫と低迷する価格に直面している。
しかし、状況打開の兆しも見られる。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に予定されているトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談を前に、ベッセント米財務長官は26日、中国が「大規模な」大豆購入を行う見通しだと述べた。ただ、中国側は現時点で購入再開の計画を確認していない。
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中国が米国産大豆を購入していない理由は?
米農務省のデータによれば、中国は今年5月以降、米国産大豆を一切購入していない。9月には新たな収穫シーズンが始まったものの、同月半ば時点でも出荷契約は1件も成立していない。
この事実上のボイコットは、米中の広範な貿易対立で中国に交渉上の優位性を与えている。トランプ氏と共和党にとって重要な支持基盤の一つである米国の大豆農家を締め付けることになるためだ。
トランプ氏は、中国が購入を見送っているのは「もっぱら交渉目的によるものだ」と非難し、この措置を「経済的な敵対行為」と呼んでいる。
米国の大豆農家への影響は?
影響は深刻だ。大豆は米国最大の農産物輸出品であり、中国はその最大の輸出先で、米国の農家が販売した大豆245億ドル(約3兆7300億円)のうち半分余りを占めた。この市場がなければ、米国の生産者は買い手の減少と価格下落に直面する。
A soybean harvest near Harvard, Illinois.イリノイ州ハーバード近郊での大豆収穫
Photographer: Christopher Dilts/Bloomberg 収穫が進む米中西部では、穀物貯蔵のサイロが満杯となっている。パデュー大学の研究者は、肥料や種子、農薬のコスト上昇に加え、大豆価格の下落が収益を圧迫していると警告している。多くの生産者は大きな損失を避けるため、作物を販売せずに保管する選択をしている。
こうした痛みは業界全体に波及している。大豆を輸出用に積み出す前に保管する穀物エレベーター、加工業者、国内輸送を担う鉄道会社など全てが減速の影響を受けている。
トランプ氏は、関税で得た資金を使って農家を支援すると述べている。ロリンズ農務長官は9月24日、「今後数週間以内」に新たな支援策を発表すると約束したが、米連邦政府機関の閉鎖で事態は複雑化している。
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米国には対中圧力のための切り札はあるか?
トランプ政権は中国に政策変更を迫る切り札があるとの姿勢を示しており、トランプ氏は会談の際に習氏と大豆問題で対峙(たいじ)する考えを繰り返し表明している。
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トランプ氏は10月半ば、米国が中国からの食用油輸入を停止することを「報復」として検討していると述べた。使用済み食用油は家庭や飲食店、食品メーカーから出る廃棄物で、自動車やトラック向けの再生ディーゼル燃料などのバイオ燃料に加工できる。
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だが、この脅しにはあまり実効性がないかもしれない。24年の中国の使用済み食用油の最大輸出先は米国だったものの、その額は12億ドル前後にとどまり、米国の対中大豆輸出額約126億ドルには遠く及ばない。中国産使用済み食用油の対米輸出量は、両国の税制やバイオ燃料政策の影響、トランプ政権の関税措置もあって減少傾向にある。
中国にリスクはあるか?
大豆は中国の食料システムに不可欠な作物だ。輸入の大半は搾油され、豚など家畜の飼料となる大豆ミールに加工される。豚肉は中国の食肉供給の中心を占めており、大豆油も調理用や食品向けに広く利用されている。
米国の農家は通常、中国への大豆供給で第2の地位を占めており、昨年は中国の輸入量の約2割を担った。しかし、中国の搾油業者や農家は通常より多い大豆在庫を積み上げており、政府備蓄もさらなる緩衝材となっている。中国の買い手は、26年初めまでは追加購入の圧力を受けずに様子をうかがう余地がある。このため、中国が米国産大豆の輸入拡大に合意したとしても、短期的に発注が急増する可能性は低い。
最近の貿易摩擦からは、中国が必要とあれば米国産大豆を排除できることが示された。また中国は、食料安全保障と経済の安定にとって重要な作物について、地政学的な最大のライバル国に再び大きく依存する事態を避けようとしていると考えられる。とはいえ、世界最大の生産国であるブラジルへの依存を強めれば、コスト上昇や南米の天候リスクといった新たな課題も生じる。
中国による米国産大豆不買は以前にもあったか?
以前にも不買はあった。現在の対立の構図は、トランプ政権1期目の18-19年の貿易戦争に類似している。中国は当時、米国の関税や輸出制限への対抗措置として、米国産大豆の購入を大幅に削減した。
こうした圧力が、トランプ政権にいわゆる第1段階貿易合意への署名を促した。この合意の下で中国は、大豆を含む数百億ドル規模の米国産農産物を購入することを約束し、その見返りとして関税の一部緩和を得た。トランプ氏は後に、バイデン前大統領がこの合意を中国側に十分に履行させなかったと批判した。
原題:
Why Soybeans Are Leverage for China in US Trade War: QuickTake(抜粋)






